判旨
建物の賃貸借契約が終了した場合、借主がその敷地についても別途賃借していたとしても、建物返還義務を免れるものではない。建物の明渡しを命ずる判決は、当然に敷地の明渡しまで命ずるものではないため、履行不能等の問題は生じない。
問題の所在(論点)
建物とその敷地の両方を賃借している場合において、建物賃貸借が終了した際に、敷地賃借権の存在を理由に建物返還義務を拒めるか。また、建物明渡しを命ずる判決が敷地賃借権との関係で履行不能な内容となるか。
規範
建物の賃借人がその敷地を別途賃借している場合であっても、建物賃貸借の終了に基づく建物返還義務は独立して認められる。また、建物返還義務の履行(建物の明渡し)と敷地の返還義務は別個の債務であり、建物明渡請求の認容は、直ちに敷地利用権の有無やその明渡しを判断するものではない。
重要事実
上告人(借主)は、被上告人(貸主)から本件家屋およびその敷地を賃借していた。建物賃貸借の更新拒絶に正当事由があると認められたため、被上告人が建物の返還を求めたところ、上告人は敷地の賃借権も有していることを理由に、建物の返還義務を負わない、あるいは建物の明渡しを命ずることは不可能または義務なき行為を強いるものであると主張して争った。なお、当該土地賃貸借が建物所有目的であるとの事実は認定されていない。
あてはめ
原審の確定した事実によれば、本件家屋の更新拒絶には正当事由がある。上告人が敷地を別途賃借しているという事実は、建物賃貸借の終了に伴う家屋返還義務(建物明渡し)の発生を妨げるものではない。また、建物の明渡しを命ずる判決は、建物自体の占有を解くことを命ずるものであり、土地の賃貸借契約の効力や土地の明渡しについてまで判示し、命ずるものではない。したがって、建物明渡しを命じることが不可能を強いることにはならない。
結論
建物賃貸借が終了した場合、借主は敷地賃借権の有無にかかわらず建物返還義務を負う。本件における建物明渡しの請求は正当である。
事件番号: 昭和39(オ)708 / 裁判年月日: 昭和40年3月16日 / 結論: 棄却
家屋を賃借居住する者は、家屋敷地を占有する。
実務上の射程
建物明渡請求と土地明渡請求の峻別を示す。建物占有者が土地占有者でもある実務上、建物退去と土地明渡しは一体として扱われることが多いが、本判決は、建物返還義務が土地の利用権原とは別個の債務として独立して存在することを明示している。答案上は、建物明渡請求の要件検討において、敷地利用権の存否が建物返還義務そのものを消滅させる抗弁にはなり得ないことを説明する際に参照すべきである。
事件番号: 昭和31(オ)748 / 裁判年月日: 昭和33年2月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約が解除された場合における、既払代金の返還義務と目的物の返還義務は同時履行の関係に立つが、本判決は個別事情によりこれらを否定した。契約解除に伴う原状回復義務相互の同時履行関係の有無が争点となる。 第1 事案の概要:上告人(買主)が売買残代金の支払を怠ったため、被上告人(売主)が売買契約を解除…
事件番号: 昭和39(オ)1033 / 裁判年月日: 昭和40年5月4日 / 結論: 棄却
一 土地賃借人が該土地上に所有する建物について抵当権を設定した場合には、原則として、右抵当権の効力は当該土地の賃借権に及び、右建物の競落人と賃借人との関係においては、右建物の所有権とともに土地の賃借権も競落人に移転するものと解するのが相当である。 二 前項の場合には、賃借人は、賃貸人において右賃借権の移転を承諾しないと…
事件番号: 昭和33(オ)568 / 裁判年月日: 昭和34年9月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法188条による権利の適法推定は、占有者が所有者に対して占有権原を主張する場合には適用されず、所有者に対抗できる正当な権原があることを別途立証する必要がある。 第1 事案の概要:上告人(占有者)は、本件土地を占有していたところ、被上告人(所有者)から土地の返還を求められた。上告人は、自身に借地権…
事件番号: 昭和34(オ)288 / 裁判年月日: 昭和35年7月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地権の承継が認められない事実関係の下では、建物買取請求権を行使することはできない。また、特段の事情がない限り、土地明渡請求が権利濫用や信義則違反に当たるとはいえない。 第1 事案の概要:上告人(被告)は本件土地上の建物を所有し、被上告人(原告)に対して建物買取請求権を主張した。しかし、原審におい…