判旨
売買契約が解除された場合における、既払代金の返還義務と目的物の返還義務は同時履行の関係に立つが、本判決は個別事情によりこれらを否定した。契約解除に伴う原状回復義務相互の同時履行関係の有無が争点となる。
問題の所在(論点)
売買契約解除に基づく土地明渡請求に対し、買主の既払内金等の返還請求権をもって同時履行の抗弁を主張することができるか、また、その両義務は同時履行の関係にあるか。
規範
契約が解除された場合、各当事者は相手方を原状に復させる義務を負い(民法545条1項)、これらの義務の間には同時履行の抗弁権(民法533条)が準用される。もっとも、解除の効力発生後に生じた不当利得返還義務等の性質によっては、常に同時履行の関係が認められるとは限らない。
重要事実
上告人(買主)が売買残代金の支払を怠ったため、被上告人(売主)が売買契約を解除した。被上告人は本件土地の明渡し等を請求したのに対し、上告人は既に支払った内金等の返還請求権との同時履行を主張したが、原審ではこの返還請求を主張していなかった。
あてはめ
上告人は、原審において内金等の返還請求を適切に主張していなかった。また、判決文によれば、本件における内金等の返還請求と土地の明渡請求との間に同時履行の関係を認めるべき特段の事情、あるいは法的関連性が認められない。したがって、明渡請求を拒絶する根拠としての同時履行の抗弁は成立しないと解される。
結論
本件土地の明渡請求と既払内金等の返還請求との間に同時履行の関係があるとは認められないため、上告人の主張は採用されず、土地明渡しが認められる。
実務上の射程
一般に解除に伴う原状回復は同時履行の関係に立つ(最判昭22.11.22参照)とされるが、本判決は、原審での主張の有無や事案の性質に鑑み、これを否定した限定的な事例として位置づけられる。答案上は、545条1項と533条の準用を原則としつつ、訴訟上の主張時期や義務の性質に留意する必要がある。
事件番号: 昭和31(オ)258 / 裁判年月日: 昭和32年11月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】催告期間内に「本旨に従う履行の提供」がなされない限り、解除権の発生を妨げることはできず、期間経過後の履行提供は解除の効力を左右しない。また、特段の事情がない限り、有効な催告に基づく解除権の行使は権利の濫用には当たらない。 第1 事案の概要:上告人は債務の履行を怠り、被上告人から相当期間を定めた催告…
事件番号: 昭和31(オ)743 / 裁判年月日: 昭和33年2月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物の競落人が敷地の賃借権を承継したと主張しても、競落時点で既に賃貸借契約が解除により消滅していた場合には、承継の余地はなく、建物収去土地明渡しを免れない。また、賃貸人が譲渡を承諾しないことが権利の濫用にあたるという主張は、賃借権の譲渡の事実自体が認められない場合には、その前提を欠く。 第1 事案…
事件番号: 昭和31(オ)763 / 裁判年月日: 昭和34年2月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地賃借人が地上建物を第三者に売却した後、土地所有者との間で土地賃貸借契約を合意解除しても、建物買受人が土地利用権を取得していない以上、建物買受人は土地所有者に対して建物の所有による土地の占有権原を主張できない。 第1 事案の概要:土地所有者Dは、Eに対して本件土地を賃貸し、Eは地上に本件建物を所…
事件番号: 昭和33(オ)518 / 裁判年月日: 昭和35年9月20日 / 結論: 棄却
一 借地法第一〇条の建物買取請求権が行使された場合、土地賃貸人は、特段の事情がないかぎり、右買取請求権行使以前の期間につき賃料請求権を失うものではないけれども、これがため右期間中は建物取得者の敷地不法占有により賃料相当の損害を生じないとはいい得ない。 二 借地法第一〇条の建物買取請求権が行使された後、建物取得者は買取代…
事件番号: 昭和38(オ)1179 / 裁判年月日: 昭和39年6月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地上の建物を取得した第三者が建物買取請求権を行使する際、既に賃借人の債務不履行(賃料不払)により土地賃貸借契約が解除されている場合には、当該第三者は買取請求権を行使できない。 第1 事案の概要:上告人(第三者)は、借地上の建物を取得し、賃貸人に対して建物買取請求権を行使しようとした。しかし、その…