判旨
主要事実である抵当権設定契約の成立を否定する場合、その前提となる間接事実に関する主張は黙示的に否定されているものと解され、判決に理由不備の違法はない。
問題の所在(論点)
主要事実(抵当権設定契約の成否)を否定するにあたり、それと両立しない間接事実の主張に対し、判決中で個別の判断を示す必要があるか(判決の理由不備の成否)。
規範
裁判所が主要事実の存否を判断した場合、それに反する間接事実の主張については、特段の事情がない限り、主要事実の判断に伴って黙示的に判断(否定)されたものと解する。したがって、当該間接事実について個別に判断を示さなくとも、判決に理由不備の違法は生じない。
重要事実
上告人(原告)は、被上告人(被告)との間で抵当権設定契約を締結したと主張して本訴を提起した。原審は、証拠に基づき抵当権設定契約の成立を肯定できる証拠がないとして、契約の成立(主要事実)を否定した。これに対し上告人は、原審が主張した特定の間接事実について判断を遺脱しており、かつ重要な証拠(甲第6号証等)の排斥理由が不明確であるとして、判決理由の不備を理由に上告した。
あてはめ
本件において、原審は本訴の最大の争点である抵当権設定契約の成立という主要事実を証拠に基づき否定している。上告人が主張する事実は、主要事実の成立を推認させる間接事実にすぎない。原判決が主要事実そのものを否定した以上、その成立を支えるはずの間接事実の主張は、論理的に前提として黙示的に否定されたことが明らかである。また、証拠の取捨選択は裁判所の裁量に属し、原判決の文脈から証拠を排斥した趣旨が明瞭に窺える以上、理由不備には当たらない。
結論
主要事実の判断に伴い間接事実の主張も黙示的に否定されているため、判決に理由不備の違法はなく、上告を棄却する。
事件番号: 昭和31(オ)788 / 裁判年月日: 昭和33年8月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が認定した事実のうち、主要事実に付加されたに過ぎない事実の認定に違法があったとしても、そのことが主要事実の認定を左右しない限り、判決に影響を及ぼす違法とはならない。 第1 事案の概要:上告人が訴外Dのために本件宅地を借り受ける交渉を被上告人になしたという事実が原審で認定された。上告人はこの事…
実務上の射程
民事訴訟法上の「理由不備」の主張に対する防御として有用。主要事実に関する判断が示されていれば、関連する間接事実や証拠の評価について逐一判断を示す必要はないという「黙示の判断」の法理を確認するものである。
事件番号: 昭和34(オ)912 / 裁判年月日: 昭和35年10月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】準消費貸借契約および抵当権設定契約が虚偽表示等により真実に合致しない場合、その事実認定は下級審の専権に属し、証拠の取捨選択に不合理がなければ上告理由とはならない。 第1 事案の概要:上告人は、準消費貸借契約および抵当権設定契約が締結されたと主張したが、第一審および原審は、提出された証拠(乙第7号各…
事件番号: 昭和33(オ)860 / 裁判年月日: 昭和35年2月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】請求の主要な争点である事実が認められない場合には、その余の事実関係を確定することなく直ちに請求を棄却することができる。裁判所が主要事実の存否につき証拠を検討し、これを認められないと判断した過程に自由心証の逸脱がなければ、判決に違法はない。 第1 事案の概要:上告人は被上告人に対し、本件家屋を買い受…
事件番号: 昭和33(オ)26 / 裁判年月日: 昭和34年7月2日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】売買の予約の成立を認めるためには、その前提となる事実について証拠に基づき合理的に認定する必要があり、供述内容が予約ではなく本契約の成立を指している場合には、予約の成立を認めることはできない。 第1 事案の概要:被上告人(原告)が上告人(被告)から土地200坪を単価140円で購入したと主張し、売買一…
事件番号: 昭和35(オ)607 / 裁判年月日: 昭和37年6月12日 / 結論: 棄却
抵当権設定契約に基づく抵当権設定登記手続請求事件において、原告は抵当権の被担保債権は、抵当権設定の日に被告に貸し付けた貸付金債権であると主張したのに対し、裁判所が右被担保債権は右設定の日より三、四箇月前に訴外人と被告との間に成立した、金銭消費貸借契約につき、右設定の日に債権者を原告とする更改契約がなされたうえ、原告と被…