判旨
準消費貸借契約および抵当権設定契約が虚偽表示等により真実に合致しない場合、その事実認定は下級審の専権に属し、証拠の取捨選択に不合理がなければ上告理由とはならない。
問題の所在(論点)
当事者間で締結されたとされる準消費貸借および抵当権設定契約が虚偽であるか否かの事実認定において、証拠の取捨選択に違法があるか。
規範
契約の存否や内容が真実に合致するか否かの判断は、挙示された証拠に基づく事実認定の問題であり、特段の事情がない限り、原審の専権に属する。証拠の取捨判断および事実認定のプロセスに論理的整合性が認められる限り、上告審がこれを覆すことはできない。
重要事実
上告人は、準消費貸借契約および抵当権設定契約が締結されたと主張したが、第一審および原審は、提出された証拠(乙第7号各証、甲第8号各証等)を検討した結果、これらの契約は真実に合致するものではないと認定した。これに対し、上告人が原審の事実認定に違法があるとして上告した事案である。
あてはめ
原審および第一審は、挙示された各証拠に基づき、本件各契約が真実に合致しない旨の事実認定を行っている。上告人が指摘する各証拠を検討しても、必ずしも原審と反対の認定を強制するものではない。したがって、原審の事実認定の経路に違法は見当たらず、証拠の取捨判断は適法な範囲内で行われたと評価される。
結論
本件上告は棄却される。原審の事実認定は是認でき、上告理由は採用できない。
実務上の射程
契約の虚偽性(民法94条1項の虚偽表示等)が争点となる事案において、事実認定の基礎となる証拠評価が合理的な範囲内であれば、上告審での不服申し立ては極めて困難であることを示す。実務上は、事実認定を争うのではなく、認定された事実に対する法の適用(規範へのあてはめ)の誤りを突くべきであることを示唆している。
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