判旨
裁判所が認定した事実のうち、主要事実に付加されたに過ぎない事実の認定に違法があったとしても、そのことが主要事実の認定を左右しない限り、判決に影響を及ぼす違法とはならない。
問題の所在(論点)
判決の結論を導くために直接必要のない付随的事実(いわゆる間接事実や補助事実に類するもの)の認定に誤りがある場合、それが判決に影響を及ぼす違法として上告理由となるか。
規範
上告審において判決に影響を及ぼすべき違法(民事訴訟法旧401条、現312条等参照)があるというためには、原判決の認定した主要事実の成立を左右するような事項について違法が認められる必要がある。主要事実に付加されたに過ぎない「いわばあらずもがなの蛇足的説明」や「無用の措辞」に関する認定の誤りは、判決の主文に影響を及ぼすものではない。
重要事実
上告人が訴外Dのために本件宅地を借り受ける交渉を被上告人になしたという事実が原審で認定された。上告人はこの事実認定に証拠上の問題があるとして上告したが、当該事実は原判決が認定した主要事実に付加された付随的な事実に過ぎず、この事実が認められないとしても主要事実の認定自体は維持される内容であった。
あてはめ
本件において、上告人が主張する交渉の事実は、判決の骨格をなす主要事実に付随して認定されたものに過ぎない。たとえこの点に関する認定に所論の違法があったとしても、それが認められないからといって主要事実の存否が覆るわけではない。したがって、かかる事実は判決主文の結論に影響を与える「主要な事実」とはいえず、その認定の当否を争うことは上告理由として不適当である。
結論
本件上告は棄却される。主要事実に影響しない付随的事実の認定の誤りは、判決を破棄すべき違法には当たらない。
実務上の射程
事件番号: 昭和31(オ)787 / 裁判年月日: 昭和33年8月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決に影響を及ぼさない事実認定の過誤や、傍論にすぎない不要な説示の違法を主張する上告理由は、原判決の破棄事由には当たらない。 第1 事案の概要:上告人は、原判決が認定した事実のうち「上告人が訴外Bのために家屋を移築すべき宅地の借受交渉を被上告人に対して行った」とする点に事実誤認があると主張した。ま…
実務上、判決書の理由中に記載された事実認定を争う際には、その事実が結論(主文)を導くために不可欠な要素(主要事実)であるか、単なる補足説明に過ぎないかを区別する必要がある。答案作成においては、争点と直接関係のない事実誤認の指摘は、判決に影響しない「無用の措辞」への攻撃として退けられる可能性があることに留意すべきである。
事件番号: 昭和31(オ)858 / 裁判年月日: 昭和33年8月28日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】当事者が書証を提出し、かつ本人尋問においてその書証の内容に合致する陳述をした場合には、弁論の全趣旨から判断してその事実を主張したものと解するのが相当である。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は、上告人(被告)の父との間で本件宅地30坪の売買契約を締結したと主張した。これに対し上告人は契約の存在を…
事件番号: 昭和33(オ)718 / 裁判年月日: 昭和36年5月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者が主張していない契約条件(代金決済方法等)を認定して売買契約の効力を認めることは、当事者の主張・立証の範囲内であれば弁論主義に反しない。また、特定の買戻し合意や代金決済合意を含む売買契約であっても、直ちに公序良俗に反して無効となるものではない。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は上告人(被…
事件番号: 昭和33(オ)258 / 裁判年月日: 昭和35年2月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】原審が行った証拠の取捨選択および事実認定が適法である限り、上告審においてこれと異なる事実を主張して原判決を非難することは、上告理由にならない。 第1 事案の概要:上告人らは、原審が認定した売買の事実について、証拠の取捨選択や事実認定に誤りがあるとして、原判決の違法を主張し、上告を申し立てた。なお、…
事件番号: 昭和33(オ)26 / 裁判年月日: 昭和34年7月2日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】売買の予約の成立を認めるためには、その前提となる事実について証拠に基づき合理的に認定する必要があり、供述内容が予約ではなく本契約の成立を指している場合には、予約の成立を認めることはできない。 第1 事案の概要:被上告人(原告)が上告人(被告)から土地200坪を単価140円で購入したと主張し、売買一…