判旨
裁判上の自白が成立した場合には、その自白が真実に反し、かつ錯誤に基づいたものであることを証明しなければ、原則としてこれを取り消すことができない。
問題の所在(論点)
裁判上の自白が成立した後、当事者がその撤回(取消し)を主張する場合に必要とされる要件は何か。
規範
裁判上の自白(民事訴訟法旧179条、現179条参照)を撤回・取消しするためには、①自白が真実に反すること、および②自白が錯誤に基づいたものであることを自白した当事者が主張・立証しなければならない。裁判所は、これらの要件が満たされない限り、当事者の自白に拘束され、撤回を認めることはできない。
重要事実
原告(被上告人)が被告(上告人)に対し、建物所有権取得を目的とした代物弁済予約の完結を主張した事案である。第一審において、被告は当初、証拠(甲第1号証の1)の成立を認める旨の自白を行った。しかし、その後被告は、当該書証は偽造であり、先の自白は事実に反し錯誤に基づくものであると主張して、自白の取消しを申し立てた。これに対し原告は、自白の取消しに異議を唱え、当該自白を援用し続けた。
あてはめ
被告は第一審において一度は証拠の成立を認める自白をしたが、その後に「偽造」や「錯誤」を理由として取消しを主張した。しかし、記録によれば、原審においてその自白が客観的に真実に反すること、あるいは具体的な錯誤が存在したことについての立証が十分になされたとは認められない。したがって、適法に成立した自白を一方的に取り消すことは許されず、原審が自白の取消しを認めなかった判断は妥当である。
結論
自白の撤回要件(反真実および錯誤)が充足されない限り、一度成立した裁判上の自白を取り消すことはできず、裁判所はこれに拘束される。
実務上の射程
事件番号: 昭和33(オ)860 / 裁判年月日: 昭和35年2月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】請求の主要な争点である事実が認められない場合には、その余の事実関係を確定することなく直ちに請求を棄却することができる。裁判所が主要事実の存否につき証拠を検討し、これを認められないと判断した過程に自由心証の逸脱がなければ、判決に違法はない。 第1 事案の概要:上告人は被上告人に対し、本件家屋を買い受…
民事訴訟法における裁判上の自白の拘束力とその撤回制限を認めた基本的な判例である。答案上では、自白の成立要件を確認した後、その撤回の可否を論じる際の「反真実・錯誤」の規範として使用する。なお、相手方の同意がある場合はこれら要件がなくとも撤回可能だが、本件のように異議がある場合は厳格な立証が必要となる。
事件番号: 昭和33(オ)26 / 裁判年月日: 昭和34年7月2日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】売買の予約の成立を認めるためには、その前提となる事実について証拠に基づき合理的に認定する必要があり、供述内容が予約ではなく本契約の成立を指している場合には、予約の成立を認めることはできない。 第1 事案の概要:被上告人(原告)が上告人(被告)から土地200坪を単価140円で購入したと主張し、売買一…
事件番号: 昭和33(オ)943 / 裁判年月日: 昭和35年11月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判上の自白の撤回は、その自白が真実に反し、かつ、錯誤に基づくものであるときは、適法に認められる。また、付随的義務の不履行を理由とする売買契約の解除は認められない。 第1 事案の概要:本件土地の売買において、履行期等に関する特約の有無が争点となった。控訴代理人は当初、特約が存在する旨の準備書面を提…
事件番号: 昭和33(オ)448 / 裁判年月日: 昭和33年10月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由が原審の証拠取捨や事実認定を非難するにすぎない場合、それは適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:上告人は、原判決が引用する第一審判決の事実認定に不服があるとして上告を申し立てた。具体的には、原審の証拠の取捨選択およびそれに基づく事実認定を非難する内容を上告理由として主張した。 …
事件番号: 昭和34(オ)632 / 裁判年月日: 昭和35年9月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判上の自白の取消しには、自白が真実に反し、かつ錯誤に基づいたものであることの証明を要するが、自白が真実に反することが証明された場合には、特段の事情がない限り、錯誤によるものと推認される。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は、本件不動産の所有権に基づき、上告人(被告)らに対して所有権移転登記の抹…