判旨
不法行為に基づく損害賠償請求において、加害行為と損害との間の因果関係が認められるためには、証拠に基づきその存在が十分に証明される必要があり、証明が不十分な場合は請求が棄却される。
問題の所在(論点)
不法行為に基づく損害賠償請求において、特定の物質(砒素)の混入が認められる場合に、その物質の摂取と損害(中毒)との間の因果関係が証明されたといえるか。
規範
不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求が認められるためには、加害行為と損害との間に事実的因果関係が存在することについて、立証責任を負う側が証拠によって証明しなければならない。当事者間に争いのない事実(民訴法179条)を除き、主要事実については裁判所が証拠の取捨選択及び事実認定を行い、因果関係の存否を判断する。
重要事実
上告人の所有する犬が、砒素が含有された粉乳を飲用した後に中毒症状を起こしたとして、粉乳の供給者等に対して損害賠償を求めた。粉乳の中に砒素が含有されていた事実については当事者間に争いがなかったが、当該犬がその粉乳を飲用したことによって砒素中毒に陥ったという因果関係の存否が争点となった。
あてはめ
本件では、粉乳に砒素が含有されていた事実は争いがないものの、上告人が主張する各証拠は、本件の犬が当該粉乳を飲用したことに起因して中毒となったことを確認するに足りるものとはいえない。第一審及び原審が示した証拠の取捨選択によれば、因果関係の証明がないとの判断は正当であり、事実認定に違法はないと解される。
結論
本件犬の砒素中毒と粉乳飲用との間の因果関係が証明されていない以上、損害賠償請求は認められない。
実務上の射程
因果関係の立証の重要性を再確認する事例である。有害物質の存在という「状況」が認められても、具体的な摂取と発症の機序(因果関係)が証拠により証明されない限り、請求は認められないという厳格な証明責任の所在を示すものとして機能する。
事件番号: 昭和31(オ)832 / 裁判年月日: 昭和35年2月19日 / 結論: 棄却
債権者が債務者に対する強制執行として第三者の店舗において第三者の所有占有にかかる営業用動産を差押えた場合でも、(イ)右第三者は債務者から営業譲渡を受けたものであつて、同一店舗で同一商号を用い右商号のみを表示する従前と同一の看板を掲げ従前の従業員数名を使用して営業を続け、右店舗には自ら居住せず自己の標札も掲げていない等の…