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理由そご・理由不備があるとされた事例
民訴法395条1項6号
判旨
判決の理由中に、一方ではある事実を否定しながら他方ではこれを肯定するような前後相矛盾する認定がある場合、理由そご又は理由不備の違法として破棄事由となる。
問題の所在(論点)
判決文において、ある争点(加害者の過失)の判断の基礎とした事実認定と、別の争点(過失相殺)の判断の基礎とした事実認定が矛盾している場合、民事訴訟法上の「理由に食い違いがあること(理由そご)」にあたるか。
規範
判決書における事実認定は、論理的に一貫していなければならない。同一の事実関係について、一方の判断(例:加害者の過失の有無)の基礎とした事実と、他方の判断(例:被害者の過失相殺の要否)の基礎とした事実が相互に矛盾する場合、その判決には理由そご又は理由不備の違法がある。
重要事実
電気室での感電死事故について、遺族らが損害賠償を請求した事案。原審は、①主任技官Dの過失を認める際、被害者Eが通電を認識していたとは認められないことを前提にDの注意義務懈怠を認定した。しかし、②Eの過失相殺を検討する際、Eは事故直前に通電を認識していたと推認されるとした。また、作業内容についても、Dの過失判断では「変成器に接近し端子に接触する可能性」を前提としたが、Eの過失判断では「端子に触れるおそれのある作業を命じたとは窺われない」として、事実認定が前後で矛盾していた。
あてはめ
原判決は、被害者Eの通電の認識の有無という同一の事実に対し、加害者Dの過失認定では「認識なし」とし、過失相殺の判断では「認識あり」として相反する認定を行っている。また、変成器への接触の蓋然性という作業状況の認定においても、Dの過失の文脈ではこれを認め、Eの過失の文脈ではこれを否定している。これらは同一の事故態様に関する中核的事実について前後相矛盾する認定を置くものであり、判決の論理的一貫性を欠くといえる。
結論
原判決には理由そご又は理由不備の違法があるため、上告人ら敗訴部分を破棄し、本件を原審に差し戻す。
実務上の射程
民事訴訟法における判決の構成に関する判例であり、起案上の直接的な規範というよりは、上告理由としての「理由そご」の典型例として理解すべきものである。答案作成においては、事実認定の矛盾を指摘する際の理論的根拠として活用できる。
事件番号: 昭和38(オ)691 / 裁判年月日: 昭和39年6月18日 / 結論: 棄却
未乾燥の印刷物を断截して製本作業をするとその結果インキの光沢を失い、断截機の押力でインキが印刷物の紙の裏に附着したりインキが飛んだり紙を汚染し出来上りが不良になるという事実を、公知の事実ということはできない。