判旨
地方自治法施行令100条の2第2項の「20日前」の告知期間は、投票期日の前日を第1日として逆算し、20日目に当たる日以前に告示すべきことを意味する。また、選挙管理委員の選任において地方自治法118条に基づき指名推薦の方法を用いることは適法であり、公務員の兼職許可を欠いても就任自体が無効になるわけではない。
問題の所在(論点)
1. 地方自治法施行令100条の2第2項の「20日前」の告知期間を充足しているか。 2. 選挙管理委員を指名推薦の方法で選任することは、地方自治法182条3項等の規定に照らし許されるか。 3. 兼職許可を欠く委員の就任や退職手続の瑕疵は、投票の効力に影響を及ぼすか。
規範
1. 期間の計算について:法令に定める「一定の日から〇〇日前までに」という告知期間は、その当該期日の前日を起算日として、遡って当該日数目に当たる日以前に告示を行うことを要する。 2. 選挙管理委員の選任について:地方自治法118条は議会で行う選挙に広く指名推薦を認めており、職務の性質上当然にこれを禁止するものではない。また、補充員の補充順序を議決で定めることも妨げられない。 3. 就任の効力について:地方公務員法等の兼職制限に違反して許可なく就任したとしても、それは公務員としての責任(懲戒等)の対象となるにとどまり、委員への就任および職務執行の効力そのものを無効とするものではない。
重要事実
昭和33年3月29日を投票期日とする賛否投票に関し、同年3月9日に告示が行われた。また、当該投票を管理する選挙管理委員の選任が指名推薦の方法によって行われていた。さらに、委員の一人である中学校長Dが、地方公務員法に基づく許可を得ずに委員に就任していた点や、退職承認手続の瑕疵の有無が争点となり、本件投票の無効が主張された。
あてはめ
1. 投票期日が3月29日の場合、その前日の3月28日を第1日として逆算すると、20日目は3月9日となる。したがって、3月9日に行われた告示は「20日前」の要件を満たしており適法である。 2. 地方自治法118条の規定は、選挙管理委員の選任にも適用される。指名推薦による選任であっても、補充順序を議決で確定すれば、同法182条3項の趣旨を害さず、適法である。 3. 委員Dが許可なく就任した事実は地方公務員法上の問題にすぎず、選任行為の私法・公法上の効力には影響しない。また、退職手続に多少の瑕疵があったとしても、直ちに投票全体の無効を導く理由にはならない。
結論
本件告示および選挙管理委員の選任手続に違法はなく、投票を無効とすべき理由はないため、上告を棄却する。
実務上の射程
期間計算(逆算)の基準日を明確にした点、および行政組織の構成員の資格欠格や選任手続の瑕疵が、直ちに当該組織による行政行為の効力に波及しないという「事実上の公務員」の理論(またはそれに近い構成)を示唆する判例として活用できる。
事件番号: 昭和32(オ)1126 / 裁判年月日: 昭和33年3月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】投票立会人に候補者の親戚や選挙運動員を選任したとしても、直ちに選挙の公正を著しく害するとはいえない。また、注文外の投票用紙の印刷等の事態があっても、具体的な不正の証拠がなく、選挙の結果に異動を及ぼすおそれがない限り、選挙を無効とはしない。 第1 事案の概要:上告人は、市町村議会等の選挙において、(…
事件番号: 昭和33(オ)1052 / 裁判年月日: 昭和34年4月28日 / 結論: 破棄自判
選挙人名簿対照係席が投票立会人席から見透すことができない投票所の施設は、公職選挙法施行令第三五第一項の趣旨に反するけれども、右対照係が行つた選挙人確認手続に違法の点がないときは、右投票所で行われた選挙を無効とすべきではない。