判旨
弁護士法56条1項にいう「品位を失うべき非行」とは、弁護士会の秩序及び信用を害する行為を包含し、情状が重い場合には除名処分とすることも相当である。
問題の所在(論点)
弁護士会が認定した各事実が、弁護士法56条1項にいう懲戒事由(品位を失うべき非行)に該当するか。また、複数の非行事実がある場合に、最も重い「除名」処分を選択することが同法57条に照らして相当といえるか。
規範
弁護士法56条1項の懲戒事由である「品位を失うべき非行」とは、弁護士としての職務上の義務違反のみならず、弁護士会の秩序および信用を害する行為をも含む。また、懲戒処分の選択は、当該非行の内容・情状に照らして判断されるべきであり、社会的信頼を著しく損なう重大な非行がある場合には、同法57条所定の最も重い処分である除名を選択することも裁量の範囲内として是認される。
重要事実
上告人(弁護士)は、複数の事実(イ、ロ、ハ)に基づき懲戒請求を受けた。具体的には、依頼者(D)との間での報酬金返還等を巡るトラブルや、弁護士会の会則(大阪弁護士会々則170条)に抵触する行為、さらには弁護士会による審訊期日への不参等の事実が認定された。上告人は、問題の解決済みであることや懲戒請求の不当性を主張したが、原審はこれを認めず、弁護士法56条の非行に該当するとして除名処分を下した。
あてはめ
本件における事実(イ)(ロ)(ハ)は、いずれも弁護士会の秩序及び信用を害する行為である。これらは単なる個人的な不始末に留まらず、弁護士の職務上著しく品位を失う非行と認められる。上告人は審訊期日への欠席についてやむを得ない事情を主張するが、原審で主張・立証されていない事実は考慮できない。一連の非行の情状を総合的に考慮すれば、弁護士としての資格を剥奪する除名処分を選択した判断は正当である。
結論
上告人の行為は弁護士法56条1項の非行に該当し、その情状から除名処分とすることは相当である。上告を棄却する。
事件番号: 昭和33(オ)831 / 裁判年月日: 昭和34年12月4日 / 結論: 棄却
弁護士会または日本弁護士連合会が弁護士を懲戒した後に、懲戒請求者と被請求弁護士との間に示談が成立したとしても、かかる事実は、懲戒処分の当否とは関係がなく、懲戒処分の当否を争う訴訟の裁判に際し斟酌すべき事実ではない。
実務上の射程
弁護士の懲戒処分における「品位を失うべき非行」の広範性と、裁量権の行使としての除名処分の適法性を確認した事例である。答案上では、弁護士の自治・倫理に関する論点において、職務外の行為や会の秩序を乱す行為が懲戒対象となる根拠として引用できる。
事件番号: 昭和38(オ)509 / 裁判年月日: 昭和39年1月16日 / 結論: 棄却
弁護士が、所属弁護士会に届出でた法律事務所を職務上の本拠とせず、同弁護士会の区域外の自宅で主として執務し、かつ職業上使用する封筒、名刺に届出事務所以外の場所を記載使用したことは、職務上の本拠を不明瞭ならしめ、弁護士法第二〇条の趣旨に反し、ひいては弁護士たる品位を失うべき非行にあたる。
事件番号: 昭和33(オ)578 / 裁判年月日: 昭和34年5月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】弁護士会の退会命令に対する異議申立を棄却した日本弁護士連合会の決定は、原審認定の事情に照らし適法であり、決定後の会費納入の事実はその適否の判断に影響しない。 第1 事案の概要:東京弁護士会に所属する弁護士である上告人が、同会から退会命令を受けた。上告人はこの命令に対し、被上告人である日本弁護士連合…
事件番号: 昭和31(オ)610 / 裁判年月日: 昭和33年6月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】弁護士が法律事件について事情を聴取した上で具体的な法律的手段を教示することは、特段の事情がない限り、弁護士法25条1号の「相手方の協議を受けて賛助し」たものに該当する。 第1 事案の概要:弁護士である上告人は、Dから山林立木の不法伐採を差し止めるよう相談を受けた。上告人は事情を聴取し、紛争が境界争…