判旨
弁護士が法律事件について事情を聴取した上で具体的な法律的手段を教示することは、特段の事情がない限り、弁護士法25条1号の「相手方の協議を受けて賛助し」たものに該当する。
問題の所在(論点)
弁護士が相談を受けて具体的な法律的手段を教示したに留まる場合、弁護士法25条1号にいう「相手方の協議を受けて賛助した」といえるか。
規範
弁護士法25条1号の「賛助」とは、依頼者からの相談に対し、当該事件の対策として特定の手段を採ることで有利に解決すべき旨の意見を陳述することをいう。具体的には、事情を聴取した結果、具体的な法律的手段を教示する段階に達すれば、特段の事情がない限りこれに該当する。一方、協議を途中で謝絶し、あるいは何ら意見を述べなかった場合には該当しない。
重要事実
弁護士である上告人は、Dから山林立木の不法伐採を差し止めるよう相談を受けた。上告人は事情を聴取し、紛争が境界争いに起因することを知った上で、Dに対し「所有権確認の訴えを提起し、仮処分を求めるほかない」と具体的な解決方法を教示した。その後、上告人は紛争の相手方であるFらから委任を受け、D側を相手方とする仮処分申請および本訴を提起した。
あてはめ
上告人は、Dからの相談に対して事情を聴取し、本案訴訟や仮処分という具体的な法律的手段を教示している。これは、当該事件の解決のためにその手段を採ることが有利であるとの意見を述べたものと解される。したがって、単なる相談の謝絶や沈黙には当たらず、特段の事情(判決文からは不明)も認められない本件においては、上告人の行為は「賛助」に該当するといえる。
結論
上告人の行為は弁護士法25条1号の「相手方の協議を受けて賛助し」たものに該当するため、相手方からの受任は同条により制限される。
実務上の射程
事件番号: 昭和33(オ)831 / 裁判年月日: 昭和34年12月4日 / 結論: 棄却
弁護士会または日本弁護士連合会が弁護士を懲戒した後に、懲戒請求者と被請求弁護士との間に示談が成立したとしても、かかる事実は、懲戒処分の当否とは関係がなく、懲戒処分の当否を争う訴訟の裁判に際し斟酌すべき事実ではない。
弁護士の職務の公正と信義を確保する趣旨から、正式な委任契約に至らない法律相談の段階であっても、具体的な方針を示した場合には、後の相手方からの受任が厳格に禁止されることを示した。実務上は、コンフリクト・チェックにおいて「法律的意見の提示」があったか否かが重要な判断基準となる。
事件番号: 昭和33(オ)1016 / 裁判年月日: 昭和34年4月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】弁護士法56条1項にいう「品位を失うべき非行」とは、弁護士会の秩序及び信用を害する行為を包含し、情状が重い場合には除名処分とすることも相当である。 第1 事案の概要:上告人(弁護士)は、複数の事実(イ、ロ、ハ)に基づき懲戒請求を受けた。具体的には、依頼者(D)との間での報酬金返還等を巡るトラブルや…
事件番号: 昭和38(オ)593 / 裁判年月日: 昭和38年12月26日 / 結論: 棄却
共有者の一人から共有物分割事件の依頼を受けている弁護士が他の共有者から同一事件につき委任を受けた場合には、弁護士法第二五条に違反する。
事件番号: 昭和33(オ)578 / 裁判年月日: 昭和34年5月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】弁護士会の退会命令に対する異議申立を棄却した日本弁護士連合会の決定は、原審認定の事情に照らし適法であり、決定後の会費納入の事実はその適否の判断に影響しない。 第1 事案の概要:東京弁護士会に所属する弁護士である上告人が、同会から退会命令を受けた。上告人はこの命令に対し、被上告人である日本弁護士連合…