共有者の一人から共有物分割事件の依頼を受けている弁護士が他の共有者から同一事件につき委任を受けた場合には、弁護士法第二五条に違反する。
一 非弁護士から事件の周旋を受けたことをもつて弁護士法第二七条に当ると判断された事例 二 共有物分割事件と弁護士法第二五条
弁護士法27条,弁護士法25条
判旨
弁護士が共有地分割事件について一方の当事者(共有者ら)から依頼を受けながら、同一事件につき対立する他方当事者の代理人として訴訟を提起する行為は、弁護士法25条に違反する。また、非弁提携や不適切な分筆登記申請についても、事実関係に基づき弁護士法違反等の責任が認められる。
問題の所在(論点)
共有地分割事件において、一方の共有者(代表者を含む)から依頼を受けた弁護士が、同一事件について対立する他の共有者の代理人として訴訟を提起する行為が、弁護士法25条(受任している事件についての職務を行い得ない場合)に抵触するか。
規範
弁護士法25条1号は、弁護士が「相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件」について職務を行うことを禁止している。これは弁護士の職務の公正と、依頼者の信頼保護、及び弁護士の品位保持を目的とするものである。共有地分割事件において、共有者の代表者かつ個人としての依頼を受けた以上、その実質的な対立当事者から重ねて依頼を受け、元の依頼者を被告として訴訟を提起する行為は、同条が禁じる利益相反行為に該当する。
重要事実
上告人(弁護士)は、訴外Gらから共有地分割事件に関する依頼を受けていた。しかし、上告人は同一の事件について、対立する訴外H外70名の委任を受け、先に依頼を受けていたGらを被告として訴訟を提起した。また、上告人は共有名義不動産の分筆登記において、共有者Dの承諾なく分筆登記を完了させたほか、非弁護士の法律事務取扱を業とするFから事件の周旋を受けた疑いもあった。
事件番号: 昭和31(オ)610 / 裁判年月日: 昭和33年6月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】弁護士が法律事件について事情を聴取した上で具体的な法律的手段を教示することは、特段の事情がない限り、弁護士法25条1号の「相手方の協議を受けて賛助し」たものに該当する。 第1 事案の概要:弁護士である上告人は、Dから山林立木の不法伐採を差し止めるよう相談を受けた。上告人は事情を聴取し、紛争が境界争…
あてはめ
上告人は、Gから共有地分割手続の依頼を受けていたが、この依頼は共有者の代表者としての立場だけでなく、G個人の依頼をも包含するものであった。それにもかかわらず、上告人は同一の分割事件についてHらの代理人となり、Gらを被告として訴訟を提起している。これは、既に承諾していた依頼内容と直接利害が対立する相手方の職務を行うものであり、弁護士法25条の禁止する利益相反行為そのものであるといえる。分筆登記についても、上告人自ら土地調査士に依頼し、共有者の承諾なく登記を完了させた責任が認められる。
結論
上告人の行為は弁護士法25条に違反する。また、非弁護士からの事件周旋(弁護士法27条違反)及び不適切な分筆登記申請についても原判決の認定は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
弁護士法25条1号の「事件」の同一性および「依頼」の範囲の解釈を示す。共有関係のように当事者が多数にわたる紛争において、一方の相談を受けた後に他方の代理人に就くことが利益相反として厳格に判断されることを示唆しており、職務倫理の起案において重要な指針となる。
事件番号: 昭和33(オ)1016 / 裁判年月日: 昭和34年4月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】弁護士法56条1項にいう「品位を失うべき非行」とは、弁護士会の秩序及び信用を害する行為を包含し、情状が重い場合には除名処分とすることも相当である。 第1 事案の概要:上告人(弁護士)は、複数の事実(イ、ロ、ハ)に基づき懲戒請求を受けた。具体的には、依頼者(D)との間での報酬金返還等を巡るトラブルや…
事件番号: 昭和48(行ツ)59 / 裁判年月日: 昭和51年3月4日 / 結論: 棄却
一、弁護士法五八条により弁護士の懲戒を請求した者は、同法六一条により日本弁護士連合会に対してした異議申出を棄却されても、右異議申出棄却裁決につき取消訴訟を提起することを許されない。 二、(省略)
事件番号: 昭和38(オ)509 / 裁判年月日: 昭和39年1月16日 / 結論: 棄却
弁護士が、所属弁護士会に届出でた法律事務所を職務上の本拠とせず、同弁護士会の区域外の自宅で主として執務し、かつ職業上使用する封筒、名刺に届出事務所以外の場所を記載使用したことは、職務上の本拠を不明瞭ならしめ、弁護士法第二〇条の趣旨に反し、ひいては弁護士たる品位を失うべき非行にあたる。
事件番号: 令和4(許)3 / 裁判年月日: 令和4年6月27日 / 結論: 破棄自判
株式会社である原告の設置した取締役責任調査委員会により、原告の取締役であった被告に対する事情聴取が行われた後、原告が、被告に対し、上記委員会の委員であった弁護士を訴訟代理人として、会社法423条1項に基づく損害賠償責任を追及する訴訟を提起した場合において、上記委員会が被告の上記責任の有無等を調査、検討するために設置され…