判旨
上告裁判所が口頭弁論の期日を指定した後であっても、書面審査により上告に理由がないと認めるときは、当該指定を取り消した上で、口頭弁論を経ずに判決で上告を棄却することができる。
問題の所在(論点)
上告裁判所が一旦口頭弁論の期日を指定した後に、これを取り消して口頭弁論を経ずに判決で上告を棄却すること(無弁論判決)が、民事訴訟法上の適法な手続として許容されるか。
規範
上告裁判所は、上告状、上告理由書、答弁書その他の書類により、上告が理由がないと認めるときは、口頭弁論を経ないで、判決をもって上告を棄却することができる(民事訴訟法319条参照、旧401条)。この規定の趣旨に照らせば、一度口頭弁論を命じ期日を指定した場合であっても、書面により上告理由がないと判断されるに至ったときは、当該指定を取り消して口頭弁論なしに棄却判決を下すことが可能である。
重要事実
上告審において、裁判所は一度事件について口頭弁論を開くことを命じ、その期日を指定した。しかし、その後、裁判所は当該指定を取り消し、口頭弁論を経ないままで、書面審査に基づき上告棄却の判決を言い渡した。これに対し特別上告人は、一旦口頭弁論を命じた以上は必ず弁論終結の手続きを経て判決すべきであり、本件の措置は訴訟法違反かつ違憲であると主張して上告した。
あてはめ
民事訴訟法(旧401条、現319条)は、上告理由がないことが明らかな場合には、裁判所の迅速な処理を可能にするため無弁論判決を認めている。本件において、原審は当初こそ口頭弁論を予定したものの、記録(上告状、理由書等)を精査した結果、上告が理由を欠くものであると判断するに至っている。したがって、一度なされた期日の指定を取り消した上で、同条の趣旨に従い口頭弁論を経ずに棄却判決を言い渡した措置は、法が認める上告審の権限行使として何ら違法ではない。
結論
上告裁判所が口頭弁論期日の指定を取り消し、無弁論で上告棄却の判決をすることは適法であり、憲法違反にも当たらない。
事件番号: 昭和28(オ)1001 / 裁判年月日: 昭和29年3月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本件上告は、民事上告事件の審判の特例に関する法律の規定する上告理由のいずれにも該当せず、法令の解釈に関する重要な主張も含まないため、棄却されるべきである。 第1 事案の概要:上告人らが原判決を不服として最高裁判所へ上告を申し立てた事案であるが、提出された上告理由の内容についての具体的な事実は判決文…
実務上の射程
上告審における無弁論判決の柔軟な運用を認めた射程の広い判例である。答案上は、上告審における口頭弁論の任意性と、書面審理中心主義の現れとして構成する際に有用である。一度期日を指定したという手続上の信頼よりも、上告理由の有無という実体的判断に基づく訴訟経済の要請が優先されることを示している。
事件番号: 昭和42(オ)549 / 裁判年月日: 昭和43年2月1日 / 結論: 棄却
文書提出の申立については、必ずしも明示的に裁判しなければならないものではなく、黙示的にすることも許されると解すべきである。
事件番号: 昭和32(ヤ)25 / 裁判年月日: 昭和34年4月23日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】上告裁判所は不服申立ての限度でのみ調査義務を負うため、上告理由として主張されていない事項や、適法な期間経過後に提出された補充書記載の事項について判断を示さなくとも、判決に影響を及ぼすべき重要な事項の判断遺脱(民事訴訟法第338条1項9号)には当たらない。 第1 事案の概要:再審原告は、前審の上告判…
事件番号: 昭和27(オ)850 / 裁判年月日: 昭和29年2月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本件上告は、最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律の定める上告理由のいずれにも該当せず、法令の解釈に関する重要な主張も含まないため、棄却されるべきである。 第1 事案の概要:上告人は、原判決を不服として上告を申し立てたが、提出された論旨の内容が上記特例法に定める要件を満たしているか…
事件番号: 昭和29(オ)431 / 裁判年月日: 昭和31年4月3日 / 結論: 棄却
不動産が譲渡担保に供せられたが、被担保債権はいまだ消滅していないという理由で、原告の所有権移転登記の請求を排斥した判決に対し、右不動産は単純に買い受けたもので譲渡担保に供されたものでないと主張してなされた被告からの上告は利益を欠くものである。