文書提出の申立については、必ずしも明示的に裁判しなければならないものではなく、黙示的にすることも許されると解すべきである。
文書提出の申立に対する裁判は明示的にすることを要するか
民訴法312条,民訴法314条
判旨
裁判所は文書提出命令の申立てに対して必ず当否の判断を下さなければならないが、その裁判は必ずしも明示的に行う必要はなく、審理の経過から却下の判断が認められる場合は黙示的な裁判も許容される。
問題の所在(論点)
裁判所が文書提出命令の申立てに対し、明示的な裁判(決定)を行わずに本案判決を言い渡すことは、裁判をしないまま判決をした違法(民事訴訟法上の手続違背)にあたるか。
規範
裁判所は文書提出の申立て(民事訴訟法219条以下)に対し、必ずその当否を判断しなければならず、裁判しないまま本案の判決を言い渡すことは違法である。もっとも、当該申立てに対する裁判は、必ずしも明示的に行う必要はなく、黙示的にすることも許される。
重要事実
上告人は原審において文書提出命令の申立てを行ったが、原審裁判所はこれに対する明示的な決定を行わないまま、口頭弁論を終結し本案判決を言い渡した。これに対し、上告人は申立てに対する裁判を欠いたまま判決したことは違法であるとして上告した。
事件番号: 昭和28(オ)1001 / 裁判年月日: 昭和29年3月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本件上告は、民事上告事件の審判の特例に関する法律の規定する上告理由のいずれにも該当せず、法令の解釈に関する重要な主張も含まないため、棄却されるべきである。 第1 事案の概要:上告人らが原判決を不服として最高裁判所へ上告を申し立てた事案であるが、提出された上告理由の内容についての具体的な事実は判決文…
あてはめ
本件記録によれば、原審の審理経過に照らし、原審裁判所は当該文書提出の申立てを許すべきではないと認めて、暗黙に却下したものとうかがわれる。このように、手続の全体的な経過から裁判所の拒絶の意思が明らかな場合には、黙示的な裁判があったと評価できる。
結論
本件文書提出の申立てについては、審理経過から黙示的に却下されたものと認められるため、何ら裁判をしなかった違法があるとはいえない。
実務上の射程
裁判所による証拠調べの申出に対する不採用決定(民訴法181条1項)や文書提出命令の要否判断について、明示的な告知が欠けていても直ちに違法とはならないとする実務上の柔軟性を認める射程を有する。答案上は、証拠申出に対する判断の要否や裁判の懈怠を論じる際に、黙示的な判断の許容性を示す根拠として活用できる。
事件番号: 昭和48(オ)552 / 裁判年月日: 昭和49年2月14日 / 結論: 棄却
確定判決の弁論手続に民訴法一四三条違反の違法があることを理由として、他の訴訟において、当該判決の無効を主張することは、許されない。
事件番号: 昭和40(オ)75 / 裁判年月日: 昭和42年4月11日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】当事者が主張している主要な争点について、裁判所が判断を示さないことは、判決の結論に影響を及ぼす明らかな判断遺脱であり、上告理由となる。本件では、土地の時効取得の主張に対し判断を示さなかった原判決を破棄し、差し戻した。 第1 事案の概要:上告人(被告または控訴人)は、本件土地について時効による所有権…
事件番号: 昭和42(オ)99 / 裁判年月日: 昭和44年5月27日 / 結論: 棄却
甲が乙の承諾のもとに乙名義で不動産を競落し、丙が善意で乙からこれを譲り受けた場合においては、甲は、丙に対して、登記の欠缺を主張して右不動産の所有権の取得を否定することはできない。
事件番号: 昭和32(テ)21 / 裁判年月日: 昭和34年5月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告裁判所が口頭弁論の期日を指定した後であっても、書面審査により上告に理由がないと認めるときは、当該指定を取り消した上で、口頭弁論を経ずに判決で上告を棄却することができる。 第1 事案の概要:上告審において、裁判所は一度事件について口頭弁論を開くことを命じ、その期日を指定した。しかし、その後、裁判…