判旨
社員総会における定足数の不足は、決議の内容の瑕疵ではなく「決議の方法」に関する瑕疵にすぎない。したがって、当該決議は当然無効とはならず、決議取消しの訴えの対象となるにとどまる。
問題の所在(論点)
総会の定足数を欠くという瑕疵が、「決議の内容」の瑕疵として決議無効事由となるのか、それとも「決議の方法」の瑕疵として決議取消事由にとどまるのか。
規範
株主総会(または社員総会)の招集手続または決議の方法に法令・定款違反がある場合は、当該決議は当然に無効となるものではなく、取消事由(会社法831条1項1号、旧商法247条)を構成するにとどまる。定足数の不足は、決議の内容自体の違法ではなく、決議の方法に関する違法に該当する。
重要事実
有限会社の社員総会において、決議が行われた。上告人は、当該決議が法令(有限会社法38条の2)に定める定足数を欠いてなされたものであると主張し、このような違法がある決議は「決議自体」が実質的根本的に法令に違反するものであり、当然に無効であると訴えた。
あてはめ
本件において、上告人が主張する定足数の不足は、決議された事項の内容そのものが法令に違反することを指すものではない。これは、決議が成立するための手続的要件を満たしていないことを指すものであり、性質上「決議の方法」の違法といえる。したがって、決議の内容が公序良俗や法令に反する場合とは異なり、当然無効と解すべき重大な瑕疵にはあたらない。このような瑕疵は、会社法の定める決議取消しの訴えによって争われるべき性質のものである。
結論
定足数不足の決議は当然無効ではなく、決議取消しの訴えの対象となるにすぎない。したがって、無効を前提とする上告人の主張は認められない。
実務上の射程
事件番号: 昭和39(オ)711 / 裁判年月日: 昭和41年1月18日 / 結論: 棄却
株主総会の議事録は、総会に関する事実の記録であり、証拠文書として作成を要求されているが、これを作成しなくても決議の効力には影響なく、その記載の不備により議事録自体の効力を左右するものではない。
手続的瑕疵(招集・方法)と実体的瑕疵(内容)を峻別する判例である。定足数不足や議決権行使の瑕疵など、決議のプロセスに関する違反は原則として取消事由となる。司法試験においては、会社法830条(無効)と831条(取消し)の振り分けの際に、本判決の論理(内容の違法か、方法の違法か)を用いて構成することになる。
事件番号: 昭和28(オ)1123 / 裁判年月日: 昭和30年3月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】株主総会決議に参加した特定の株主の株式取得原因が公序良俗に反し無効であるとしても、それは決議方法の違法に留まり、決議内容の違法には該当しない。 第1 事案の概要:上告人らは、本件株主総会の決議形成過程において、特定の株主が株式を取得した原因が犯罪に関連し、民法90条(公序良俗)に反して無効であると…
事件番号: 昭和24(オ)347 / 裁判年月日: 昭和25年6月13日 / 結論: 棄却
解任された取締役につきなされた辞任の登記は、取締役たる資格消滅という身分変動については、結局真実に合致しているから、登記としてその効力を有する。
事件番号: 昭和52(オ)833 / 裁判年月日: 昭和53年4月14日 / 結論: 棄却
有限会社の社員総会において、その社員である特定の者を取締役に選任すべき決議をする場合に、その特定の者は、右決議につき特別の利害関係を有する者にあたらない。
事件番号: 昭和36(オ)1376 / 裁判年月日: 昭和38年8月8日 / 結論: 棄却
同族会社における株主総会の招集手続について、有限会社法第三八条等の特別規定はないから、商法第二三二条の手続によらねばならない。