判旨
農地買収計画の樹立当時、所有者が当該農地の所在する市町村の区域外に住所を有している場合、当該農地は「住所のある市町村の区域外において所有する小作地」として買収処分の対象となる。
問題の所在(論点)
農地法制に基づく買収処分において、所有者が「住所のある市町村の区域外」に居住しているかどうかの判断基準、およびそれを前提とした買収処分の適法性が問題となった。
規範
自作農創設特別措置法(当時)における買収対象の判断基準は、買収計画樹立時において、所有者がその農地の所在する市町村の区域内に住所を有しているか否かという客観的な居住実態により決せられる。
重要事実
上告人は農地を所有していたが、本件買収計画が樹立された当時、上告人は当該農地の所在する自治体ではなく、神戸市に住所を有していた。このため、行政当局は当該農地を「区域外所有者の小作地」と判断し、買収処分を行った。上告人はこの処分に対し、事実認定の誤りや権利濫用、違憲性を主張して争った。
あてはめ
原審が挙げた証拠によれば、買収計画樹立時に上告人が神戸市に住所を有していた事実は適法に認定される。この事実に基づけば、本件農地は上告人が住所を有する市町村の区域外に存在する小作地にあたるといえる。したがって、法律の規定に基づき買収処分の対象となし得るとした原審の判断は正当である。上告人が主張する権利濫用や違憲の主張は、認定された事実に反する前提に基づくものであり、採用できない。
結論
本件買収計画樹立時に所有者が区域外に居住していた以上、当該農地は買収の対象となり、本件処分は適法である。
実務上の射程
本判決は、農地買収における「区域外所有」の判断時期を買収計画樹立時とする実務上の基準を確認したものである。答案上では、行政処分の要件該当性を判断する際の基準時や、客観的な住所実態に基づく法適用を論じる際の簡潔な補強材料として利用できる。
事件番号: 昭和26(オ)728 / 裁判年月日: 昭和28年9月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法3条1項1号にいう「小作地」には、国内のいずれの市町村にも住所を有しない不在地主が所有する小作地も含まれる。したがって、住所の存否にかかわらず、当該要件を満たす農地の買収処分は適法である。 第1 事案の概要:上告人は、昭和20年11月23日当時、特定の町(a町)に住所を有してい…
事件番号: 昭和33(オ)1084 / 裁判年月日: 昭和35年11月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法における農地買収令書の交付に代わる公告の適法性は、農地買収の急速遂行の必要性や当時の交通事情等を総合考慮して判断すべきであり、知事が相当な調査を尽くしても所有者の住所が判明しない場合には、公告をもって令書交付に代えることができる。 第1 事案の概要:上告人はブラジルに在住してい…
事件番号: 昭和30(オ)542 / 裁判年月日: 昭和31年12月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法に基づく農地の買収において、特定の除外事由を主張することは、当該土地が買収計画樹立当時に農地であることを前提とする。また、原審において主張・判断されていない事項を上告審で新たに主張することは適法な上告理由とならない。 第1 事案の概要:上告人は、本件係争土地が自作農創設特別措置…