判旨
唯一の証拠方法であっても、証拠調べの実施に障碍があり、その実施が可能か不明または時期を予見できない場合には、裁判所は当該証拠調べを行わずに結審できる。
問題の所在(論点)
申立てられた証拠が唯一の証拠方法である場合に、当事者の不出頭等の事情をもって、裁判所が当該証拠調べを行わずに弁論を終結することは許されるか。民事訴訟法上の「証拠調べの障碍」の意義が問題となる。
規範
当事者が申し立てた証拠が唯一の証拠方法である場合、裁判所は原則としてこれを採用し取り調べなければならない。しかし、証拠調べについて「不定期間の障碍」がある場合(旧民訴法260条、現行民訴法183条参照)には、例外的にその証拠調べを行うことなく弁論を終結し、判決をすることができる。ここでいう障碍とは、証拠調べの施行が可能か不明であり、または施行可能であってもその時期を予見し得ない状況を指す。
重要事実
上告人は、第一審の本人尋問期日に適法な呼出しを受けながら正当な理由なく出頭しなかった。続く原審においても、一度は病気(流行性感冒)を理由に欠席し、その後の指定期日には再び適法な呼出しを受けながら正当な理由なく出頭しなかった。上告人側は、この本人尋問が「唯一の証拠」であるにもかかわらず、これを行わずに結審した原審の措置には審理不尽の違法があると主張して上告した。
あてはめ
本件において、上告人は一審から通じて複数回、適法な呼出しを受けながら合理的な理由なく本人尋問期日に出頭していない。このような状況下では、唯一の証拠である本人尋問であっても、その施行に障碍があり、果たして実施できるか否か不明である。また、実施可能としてもその時期を具体的に予見できない。さらに、最終期日において訴訟代理人が延期を求めた形跡もない。したがって、本件は「不定期間の障碍」がある場合に該当し、裁判所が証拠調べを断念して結審したことは相当であると評価される。
結論
唯一の証拠であっても、実施の目処が立たない不定期間の障碍がある場合には、これを取り調べずに弁論を終結しても審理不尽の違法とはならない。上告棄却。
実務上の射程
実務上、当事者の不出頭が続く場合に、裁判所が「唯一の証拠」の申立てをいかなる要件で切り捨てて結審できるかの基準を示す。答案上は、釈明権の行使や証拠採用の必要性と関連させつつ、訴訟遅延防止の観点から「不定期間の障碍」を認定する際の当てはめ材料として活用する。
事件番号: 昭和33(オ)43 / 裁判年月日: 昭和35年4月26日 / 結論: 棄却
証人尋問が唯一の証拠方法であつても、右尋問期日に証人および申請当事者が出頭せず、しかも従来その当事者は病気、示談、調停などを理由として期日の延期または訴訟手続の停止申請をくり返すだけで訴提起以来数回行われた口頭弁論期日に一度も出張したことがたく訴訟代理人の選任もしない等の経過から見て、たとえ証人尋問のため新期日を指定し…