唯一の証拠方法についても、民訴第二六〇条の適用を妨げない。
唯一の証拠方法と民訴第二六〇条の適用の有無
民訴法260条
判旨
唯一の証拠方法であっても、証拠調べに不定期間の障害があるときは、裁判所は当該証拠を取り調べずに結審することができる。証人の所在が不明で呼出状が届かず、調査を尽くしても判明しない場合は「不定期間の障害」に該当する。
問題の所在(論点)
事実認定の唯一の証拠として申し出られた証人が、所在不明等の事情により取り調べられない場合、裁判所は民事訴訟法上の「証拠調べにつき不定期間の障害があるとき」として、その尋問を省略し結審することができるか。
規範
証拠調べについて「不定期間の障害」(民事訴訟法182条、旧260条)があるときは、裁判所は証拠調べをしないことができる。この規定は、当該証人が事実認定のための「唯一の証拠方法」である場合であっても適用を妨げられない。具体的には、証人の所在を探索し、送達を試みてもなおその行方が判明しない客観的事状が認められる場合には、取調べの障害が解消される時期が不明であるといえる。
重要事実
上告人が事実立証のために申し出た証人に対し、裁判所は前後2回にわたり呼出状を発送したが、いずれも転居先不明で届かなかった。1回目の宛先は個人宅、2回目の宛先は宿泊所であり、特に2回目については郵便局員が再度にわたり調査を行った。しかし、証人は指定の口頭弁論期日に出頭せず、依然として所在が不明な状態であった。原審はこの証人尋問を行わないまま弁論を終結した。
あてはめ
本件では、異なる二つの住所宛に呼出状を送達しているが、いずれも転居先不明で不送達となっている。特に、宿泊所を宛先とした際には郵便局員による再度の調査も行われており、裁判所として可能な限りの所在探索の手順を経ていると評価できる。このような状況下では、当該証人の所在がいつ判明し、いつ尋問が可能になるかの見通しが立たない。したがって、たとえ唯一の証拠であっても、訴訟の遅延を避けるべき要請から「不定期間の障害」があると解するのが相当である。
結論
本件証人の取調べには不定期間の障害があるといえるため、原審が証人尋問を行わずに弁論を終結した判断に違法はない。
実務上の射程
唯一の証拠方法の採用義務(自由心証主義の限界)と、訴訟遅延の防止という訴訟指揮権の調整局面で活用する。証人所在不明のケースにおいて「郵便局員による調査」や「複数回の不送達」といった具体的事実があれば、182条による証拠排除が正当化される基準を示す判例である。
事件番号: 昭和38(オ)1238 / 裁判年月日: 昭和39年4月3日 / 結論: 棄却
当事者が証人および当該当事者本人の尋問を申請したが、二度にわたり指定した右証拠調を行うべき口頭弁論期日に右両名とも出頭せず、また、二度目の口頭弁論期日には右当事者の訴訟代理人も出頭せず、その不出頭の理由を釈明したなんらの書面の提出もなかつたときは、右証人および当事者本人の尋問が右当事者主張の抗弁事実立証のための唯一の証…