判旨
農地法上の許可を要する農地の売買契約であっても、当該許可を停止条件とする契約として締結することは妨げられず、直ちに公序良俗等に反して無効となるものではない。
問題の所在(論点)
農地法(当時の農地調整法等)に基づき行政庁の許可を要する農地の譲渡において、許可を停止条件とする売買契約を締結することは、強行法規違反や公序良俗違反として無効になるか。
規範
行政庁の許可を要件とする法的規制がある場合であっても、その許可を受けることを停止条件とする契約(条件付売買契約)は、特段の事情がない限り、私法上の合意として有効に成立する。
重要事実
昭和27年3月19日、上告人の先代Dと被上告人との間で、本件田地の譲渡に関する協定が成立した。当時の農地調整法4条および同法施行令2条1項によれば、当該農地の譲渡には知事の許可が必要であった。上告人側は、当時の農地制度(先買制度や強制譲渡制度)に照らし、個人間の農地譲渡は許されず、また知事の許可がない状態での契約は無効であると主張した。
あてはめ
まず、当時の法令改正により農地の先買制度は廃止されており、個人間の譲渡を一律に禁止する法的根拠はない。次に、知事の許可が必要とされる農地譲渡について、原審は本件譲渡を知事の許可を停止条件とする契約であると認定した。このような停止条件付契約は、許可が得られた段階で効力を発生させることを目的とするものであり、許可なく権利移転を強行するものではないため、脱法行為には当たらず無効と解すべきではない。
結論
知事の許可を停止条件とする農地の譲渡契約は有効であり、上告人らの無効主張は認められない。
実務上の射程
事件番号: 昭和30(オ)914 / 裁判年月日: 昭和33年3月28日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】農地売買において知事の許可を得る手続をする約束がある場合、許可前の引渡しや耕作の開始という事実のみをもって、直ちに農地法違反の無効な契約と断定することはできない。 第1 事案の概要:売主と買主との間で本件農地の売買契約が締結された際、直ちに知事の許可を受ける手続をすることが約束されていた。しかし、…
農地法3条の許可を要する売買において、許可取得を条件とする条件付所有権移転登記(仮登記)の可否や、許可申請協力義務の根拠として頻用される規範である。行政上の規制が私法上の契約効力を直ちに否定するものではないことを示す典型例として、民法91条(任意規定)や90条(公序良俗)の文脈で活用できる。
事件番号: 昭和32(オ)923 / 裁判年月日: 昭和36年5月26日 / 結論: 棄却
一 知事の許可を得ることを条件として農地の売買契約をしたとしても、いわゆる停止条件を附したものということはできない。 二 農地の売主が故意に知事の許可を得ることを妨げたとしても、買主は条件を成就したものとみなすことはできない。
事件番号: 昭和30(オ)995 / 裁判年月日: 昭和33年6月5日 / 結論: 棄却
一 知事の許可を停止条件として締結された農地の売買契約は、無効ではない 二 土地の買主が約定の履行期後、売主に対し、しばしばその履行を求め、かつ売主において右土地の所有権移転登記手続をすれば、何時でも支払えるよう残代金の準備をしていたときは、民法第五五七条にいわゆる「契約の履行に著手」したものと認めるのが相当である
事件番号: 昭和34(オ)642 / 裁判年月日: 昭和35年11月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地法上の許可を停止条件とする農地の売買契約において、地目が畑であり実態が農地であると認められる場合には、その性質に基づき適法な事実認定がなされるべきである。 第1 事案の概要:被上告人らは、上告人から本件土地を北海道知事の許可を停止条件として買い受けた。本件土地の地目は「畑」であり、原審において…