一 知事の許可を得ることを条件として農地の売買契約をしたとしても、いわゆる停止条件を附したものということはできない。 二 農地の売主が故意に知事の許可を得ることを妨げたとしても、買主は条件を成就したものとみなすことはできない。
一 農地の売買契約において「知事の許可を得ることを条件とする」ことの意義 二 農地の売主が故意に知事の許可を得ることを妨げた場合と民法第一三〇条の類推適用の有無
民法127条,民法130条,農地法3条
判旨
農地法3条の許可(法定条件)は公益上の必要性に基づく効力発生要件であり、当事者が条件成就を妨げたとしても民法130条を類推適用して許可があったものとみなすことはできない。
問題の所在(論点)
農地法3条の許可のように、法律が定める効力発生要件(法定条件)について、当事者が不当にその成就を妨げた場合に、民法130条を類推適用して条件が成就したものとみなすことができるか。
規範
農地法3条に基づく都道府県知事の許可は、公益上の必要性から法律が要求する効力発生要件(法定条件)である。このような法定条件については、民法130条のような当事者の意思表示に基づく擬制的効果によって権利移転の効力を左右することは、その性質上許されない。
重要事実
上告人と被上告人Bとの間で農地の売買契約が締結された。農地法3条4項(当時)によれば、農地の所有権移転には知事の許可が必要であるが、被上告人Bに許可という条件の成就を妨げる行為があった。上告人は、民法130条に基づき条件が成就したものとみなされる結果、既に農地の所有権を取得したと主張して本訴を提起した。
事件番号: 昭和34(オ)1062 / 裁判年月日: 昭和37年10月5日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】農地の所有権移転につき都道府県知事等の許可または承認を要する場合、それらを得ないまま締結された贈与契約のみでは所有権移転の効力を生じない。 第1 事案の概要:上告人は被上告人に対し、本件農地を含む不動産を贈与する契約を締結した。しかし、上告人はその後、本件農地を第三者(原審共同被控訴人D)に売り渡…
あてはめ
農地法3条の許可制は、農地の権利移転を規制するという公益的見地から設けられたものである。民法130条は私的な合意に基づく条件(約定条件)を前提とした規定であり、同条を適用して許可があったものと擬制することは、行政庁の判断を排除して公益的規制を無効化することに等しい。したがって、相手方に妨害行為があったとしても、現実に許可がない以上、所有権移転の効力は生じないというべきである。
結論
民法130条の類推適用は認められず、農地法上の許可がない限り所有権は移転しない。したがって、上告人の請求は認められない。
実務上の射程
法定条件(法令により要求される行政庁の認可等)全般に民法130条が適用されないことを示す重要な射程を持つ。答案上では、農地売買における許可未取得の効力を論ずる際、信義則や130条類推適用の可否を検討する場面で、本判決を根拠に否定的な論証を展開するために用いる。
事件番号: 昭和30(オ)292 / 裁判年月日: 昭和32年4月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の買収処分が無効であったとしても、その後に当該土地を贈与された者が農地法上の許可を得ていない場合、所有権を取得し得ないため、買収処分の無効確認及び登記抹消等を求める訴えの利益(当事者適格)を欠く。 第1 事案の概要:福島県知事は、自作農創設特別措置法に基づき、本件土地を補助参加人の所有地として…
事件番号: 昭和38(オ)311 / 裁判年月日: 昭和40年10月19日 / 結論: 棄却
現に耕作の目的に供されている土地であつても、不法に開墾されたものであり、開墾の経緯について原審が確定したような事情(原判決理由参照)があるときは、農地法第二条第一項にいう農地にあたらないと解するのが相当である。
事件番号: 昭和36(オ)1320 / 裁判年月日: 昭和38年12月26日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】行政処分が当然無効となるための「瑕疵の明白性」は、処分の外形上客観的に、誤認が一見して看取できるか否かにより決すべきであり、行政庁の調査怠慢の有無は直接関係しない。 第1 事案の概要:行政庁が、被上告人の自作地である農地を小作地であると誤認し、農地買収処分を行った事案。原審は、本件農地が実際には自…
事件番号: 昭和27(オ)1132 / 裁判年月日: 昭和32年9月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の買収処分において、登記簿上の名義人を所有者としてなされた処分は、異議申立や出訴期間内に行われた争訟によって是正されない限り、直ちに当然無効とはならない。 第1 事案の概要:政府が自作農創設特別措置法に基づき農地の買収処分を行った際、真実の所有者ではなく登記簿上の名義人を相手方として買収計画お…