判旨
不法行為または債務不履行に基づく損害賠償の算定において、公定価格制度が存在する場合、公定価格を超える部分は特別の事情による損害としての要件を欠く限り、賠償の対象とはならない。
問題の所在(論点)
物価統制法上の公定価格が存在する場合に、その公定価格を超える額を損害賠償額として請求できるか。具体的には、公定価格超過分が民法上の「特別の事情による損害」として認められるための要件が問題となる。
規範
損害賠償の範囲について、物価統制令等により公定価格が定められている場合、損害額の算定は原則として公定価格を基準とすべきである。公定価格を超える価格を前提とした損害については、民法416条2項(または709条における相当因果関係)の「特別の事情」によって生じた損害として、予見可能性等の厳格な要件を充足しない限り、これを認めることはできない。
重要事実
上告人(原告)は、本件醤油油の取引に関連して損害を被ったとして、相手方に対し損害賠償を請求した。その際、上告人は当時の公定価格を超える価格に基づいた損害が発生していると主張し、いわゆる「特別の事情」による損害賠償を求めたが、原審はその主張を排斥したため、上告人が最高裁に上告した事案である。
あてはめ
本件において、上告人が主張する「公定価格を超える部分」の損害については、原判決がその請求を認容できない理由を具体的に示して排斥している。この原審の判断は相当であり、上告人が主張するような特別事情の存在を認めるに足りる事実は認められない。したがって、公定価格の枠内、あるいは特別事情の立証がない状態での請求は認められないと判断される。
結論
本件醤油油の公定価格を超える部分についての損害賠償請求は、特別事情による損害としての要件を満たさないため、棄却されるべきである。
実務上の射程
統制経済下や強行法規による価格制限がある場合における損害算定の基準を示す。司法試験の答案上では、逸失利益や目的物の時価を算定する際、公的な価格制限がある場合にはその制限価格が原則となること、それを超える主張には特別事情の主張・立証が必要であることを示す際に引用できる。ただし、現代の自由経済下では限定的な場面での適用に留まる。
事件番号: 昭和32(オ)661 / 裁判年月日: 昭和34年5月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告審において原審の事実認定を争うことは、それが原審の専権に属する証拠の取捨および事実の認定に対する非難にすぎない場合、上告理由として認められない。 第1 事案の概要:上告人が、原審が認定した事実およびその基礎となった証拠の取捨選択の不当を理由として、最高裁判所に上告を提起した事案。判決文中に具体…