判旨
罹災都市借地借家臨時処理法に基づく借地申出の無効原因となる事情や、同法に基づく解除権の発生等の消滅事由については、その効力を争う者が主張立証責任を負う。
問題の所在(論点)
罹災都市借地借家臨時処理法に基づく優先賃借権の成否や消滅に関し、申出を無効とする但書事由や解除事由の主張立証責任は、いずれの当事者が負うか。また、これらについて裁判所に釈明権行使の義務があるか。
規範
罹災都市借地借家臨時処理法2条1項に基づく借地の申出がなされた場合、同項但書所定の事由(権原により建物所有目的で土地を使用する者が既に存在すること等)による申出の無効や、同法7条に基づく解除権の発生、あるいは賃借権の消滅といった事由は、当該権利の発生を阻害し、または消滅させる抗弁事由である。したがって、これらの事由については、当該権利の効力を否定しようとする当事者が自ら主張・立証する義務を負い、裁判所が職権で釈明すべき事項ではない。
重要事実
被上告会社は、本件土地上の建物が罹災した際、当該建物の賃借人であったとして、罹災都市借地借家臨時処理法2条に基づき本件土地の優先賃借権を主張し、借地の申出を行った。これに対し上告人は、①訴外Dに同法2条1項但書所定の事由(既に土地を使用する権原を有する者の存在等)があったため申出は無効であること、②同法7条に基づく解除権が発生していること、③賃借権が第三者に譲渡され消滅したこと等を上告理由で主張したが、これらは原審において主張されていなかった。
あてはめ
本件において、被上告会社による借地の申出が有効であれば優先賃借権が発生する。これに対し、同法2条1項但書に該当し申出が無効であるとの事情、あるいは同法7条による解除権の発生や権利の譲渡といった事由は、被上告会社の権利を否定する側である上告人にとって有利な事実である。上告人が原審においてこれらの事実を具体的に主張した形跡は認められない以上、裁判所が自らこれらの存否を調査したり釈明したりする必要はなく、上告人がその主張立証を怠った不利益を負うべきである。したがって、これらの事実を考慮せずに申出を有効と認めた原判決に審理不尽等の違法はない。
結論
優先賃借権の発生を妨げる事由や権利消滅事由については、その援用を希望する側(上告人)が主張立証責任を負い、特段の主張がない限り裁判所がこれを考慮する必要はない。
事件番号: 昭和32(オ)890 / 裁判年月日: 昭和35年3月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地の明渡請求が権利の乱用に該当するか否かは、具体的な事実関係に基づき、請求によって得られる利益と相手方の被る不利益等を比較衡量して判断されるべきであり、本件においては権利の乱用にはあたらない。 第1 事案の概要:上告人(被告)らが占有する本件土地につき、被上告人(原告)が土地明渡を求めた事案であ…
実務上の射程
特別法に基づく権利発生の要件に関する主張立証責任の所在を確認した事例である。司法試験においては、民事訴訟法上の主張立証責任の一般的な分配原則(権利根拠規定・権利障害規定・権利消滅規定)の具体例として、特に特別法上の抗弁事由の処理を検討する際の参考となる。
事件番号: 昭和35(オ)460 / 裁判年月日: 昭和35年9月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法188条による権利の推定は、占有者とその占有の伝来した前主との間には及ばない。したがって、他人の所有地を占有する者が正権原(賃借権等)を主張する場合、その立証責任は占有者側にある。 第1 事案の概要:被上告人(土地所有者)が上告人(占有者)に対し、所有権に基づき建物の収去と土地の明渡しを請求し…
事件番号: 昭和32(オ)189 / 裁判年月日: 昭和35年12月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者が主張した損害賠償請求の範囲が特定の費目に限定されている場合、それとは別の損害(賃料相当損害等)を別個の請求として明確に主張した形跡がない限り、裁判所が当該損害について判断しなくても判断遺脱の違法はなく、釈明義務も負わない。 第1 事案の概要:上告人(原告)は、競落した宅地および家屋を転売で…
事件番号: 昭和27(オ)935 / 裁判年月日: 昭和30年10月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】罹災都市借地借家臨時処理法2条に基づく借地権は、登記や地上建物の登記を欠く場合であっても、設定から10年間は第三者に対して対抗することができる。 第1 事案の概要:本件における事案の詳細は判決文からは不明であるが、罹災法2条に基づき設定された借地権の存否、および当該借地権の対抗要件の欠落を理由とし…
事件番号: 昭和32(オ)730 / 裁判年月日: 昭和36年3月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】弁済の事実について争いがある場合、債権者が弁済充当の主張立証責任を負うのは、債権者が他の債務の存在を主張立証した後の問題である。 第1 事案の概要:債権者である上告人は、債務者である被上告人に対し、本件債務のほかに固定資産税を支払うべき債務(他の債務)を負担していると主張した。しかし、上告人は原審…