判旨
農地のいわゆる遡及買収は憲法29条に違反せず、和解により耕作することになった農地についても、特段の事情がない限り、遡及買収を違法とすべき理由はない。
問題の所在(論点)
農地の遡及買収が憲法29条の財産権の保障に違反するか。また、和解により耕作権を得た農地に対して遡及買収を行うことが違法となるか。
規範
農地の遡及買収は、憲法29条に反するものではなく、合憲である。また、民事上の和解の結果として当該農地を耕作することとなった事情がある場合であっても、それが直ちに遡及買収の適法性を左右するものではない。
重要事実
上告人は、農地改革に伴う農地の遡及買収の対象となった土地について、憲法29条(財産権の保障)に違反する旨を主張した。また、上告人は和解の結果として当該農地を耕作することになっていたという経緯があり、このような事情がある場合にまで遡及買収を行うことは違法であると主張して上告した。
あてはめ
最高裁は、農地の遡及買収が憲法29条に違反しないとする従前の判例(昭和33年4月25日判決)を引用し、本件においても憲法違反はないと判断した。また、上告人が和解によって耕作することになったという事実についても、原判決が認定した諸般の事情のもとでは、遡及買収を違法とする根拠にはなり得ないと評価した。これは、公法上の買収処分の効力が私法上の合意によって当然に妨げられるものではないことを示唆している。
結論
本件遡及買収は憲法29条に違反せず、和解という特段の事情があっても違法とはならない。したがって、上告は棄却される。
実務上の射程
農地改革という特殊な歴史的背景下での判決ではあるが、公法上の処分が私法上の合意(和解)に優先し得る局面や、遡及的な財産権制限の合憲性を検討する際の参照先となる。ただし、現代の行政法・憲法訴訟において、正当な補償や信頼保護の観点から同様の遡及的処分が常に許容されるわけではない点に注意が必要である。
事件番号: 昭和30(オ)220 / 裁判年月日: 昭和33年4月25日 / 結論: 棄却
農地のいわゆる遡及買収に関する自作農創設特別措置法第六条の二、第六条の五の規定は憲法第二九条、同第三九条に違反しない
事件番号: 昭和37(オ)1349 / 裁判年月日: 昭和38年7月19日 / 結論: 棄却
自作農創設特別措置法第四七条の二が憲法第三二条に違反しないとする昭和二四年五月一八日大法廷判決(昭和二三年(オ)第一三七号、民集三巻六号一九九頁)の趣旨に徴し、右法規と同趣旨の行政事件訴訟特例法第五条は、憲法の同条規に違反しないものといわねばならない。
事件番号: 昭和28(オ)451 / 裁判年月日: 昭和34年1月29日 / 結論: 棄却
同一土地につき二個の買収計画が並存することは相当でなく、両計画をともに取り消した上で新たに買収計画を定むべきであるとの理由で、町農業委員会の定めた農地買収計画を取り消す旨の訴願裁決があつた場合、町農業委員会が右趣旨に従い右土地につき再度買収計画を定めることは、訴願法第一六条に違反するものではない。