農地のいわゆる遡及買収に関する自作農創設特別措置法第六条の二、第六条の五の規定は憲法第二九条、同第三九条に違反しない
農地のいわゆる遡及買収に関する自作農創設特別措置法第六条の二、第六条の五の規定の憲法第二九条第三九条適否
自作農創設特別措置法6条の2,自作農創設特別措置法6条の5,憲法29条,憲法39条
判旨
憲法39条は刑罰法規についてのみ事後法の制定を禁止しており、民事法規の効果を遡及させることは禁止されていない。また、自作農創設のための農地買収は公共の福祉に適合するものであり、遡及的な買収規定であっても憲法29条に違反しない。
問題の所在(論点)
1. 民事法規において法律の効果を遡及させる規定を設けることは憲法39条に違反するか。2. 公共の福祉に基づく農地買収において、遡及的な買収基準を設けることは憲法29条が保障する財産権の侵害に当たるか。
規範
1. 憲法39条が禁止する事後法の制定は刑罰法規に限られ、民事法規については法律の効果を遡及させることは禁止されない。2. 財産権(憲法29条)に対する制限は、それが公共の福祉を増進するための施策である場合には許容され、買収規定が遡及的な性質を有していても、その合理性が認められる限り同条に違反しない。
重要事実
上告人の所有する土地が、自作農創設特別措置法(以下「自創法」)6条の2及び6条の5の規定に基づき、同法施行前の昭和20年11月23日時点の事実関係を基準として遡及的に買収された。上告人は、かかる遡及買収は憲法39条(事後法の禁止)及び29条(財産権の侵害)に違反すると主張して争った。
あてはめ
1. 憲法39条の趣旨は、刑罰の不遡及を保障するものであり、民事法規についてまで遡及を禁じているものではないため、自創法の遡及買収規定は同条に反しない。2. 自作農の創設維持は、わが国の農地制度における重要な国策であり、公共の福祉を増進するための正当な施策といえる。3. 自創法による買収が既得の農地所有権を強制的に取得するものである以上、通常の買収(3条)と遡及買収とで既得権制限の本質に差異はなく、公共の福祉を目的とする以上、遡及買収のみを憲法29条違反と解することはできない。
結論
本件遡及買収規定は憲法39条に違反せず、また公共の福祉に適合する正当な制限として憲法29条にも違反しない。
実務上の射程
法令の遡及適用が争点となる場合に、刑罰不遡及の原則(39条)が民事法規には及ばないことを示す根拠として活用できる。また、財産権の遡及的な制限が問題となる事案において、その目的が公共の福祉に合致するものである限り、立法政策上の裁量が広く認められることを示す判例である。
事件番号: 昭和25(オ)236 / 裁判年月日: 昭和29年7月19日 / 結論: 棄却
一 農地買収計画に対する異議決定に関与した村農地委員が、県農地委員会の委員して、右計画に対する訴願裁決に関与することは違法ではない。 二 行政事件訴訟特例法第一一条によつて農地買収計画に関する訴願裁決の取消を求める請求を棄却するについて、単に一般的に農地買収は公共の福祉のためになされる旨を判示し、具体的に当該事件につい…
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自作農創設特別措置法第四七条の二が憲法第三二条に違反しないとする昭和二四年五月一八日大法廷判決(昭和二三年(オ)第一三七号、民集三巻六号一九九頁)の趣旨に徴し、右法規と同趣旨の行政事件訴訟特例法第五条は、憲法の同条規に違反しないものといわねばならない。