判旨
上告理由が原審の適法な事実認定を非難するにすぎない場合、原判決に影響を及ぼす明らかな法令の違背があるとは認められないため、上告は棄却される。
問題の所在(論点)
原審の事実認定を不服として上告がなされた場合において、その主張が「判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違背」に該当し、上告理由として認められるか。
規範
上告審において原判決を破棄するためには、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違背(旧民訴法394条、現行民訴法312条等参照)が必要である。原審が適法に行った事実認定を単に非難するに留まる主張は、適法な上告理由を構成しない。
重要事実
本件の上告人は、原審(控訴審)が行った事実認定に不服があるとして上告を申し立てた。しかし、その主張の具体的な内容は、原審の証拠選択や事実の確定プロセスに対する主観的な批判に終始するものであった。
あてはめ
本件の論旨は、原審が適法に実施した事実の認定を不当であるとして非難するものである。これは、上告審の対象となる法令解釈の誤りや重大な手続違背を指摘するものではなく、事実認定の当否を争うものにすぎない。したがって、原判決に影響を及ぼす明らかな法令の違背があるとは認められない。
結論
本件上告を棄却する。上告費用は上告人の負担とする。
実務上の射程
上告審が事後審・法律審であることを示す典型的な裁判例である。司法試験の答案作成においては、事実認定の違法を上告理由とする場合に、単なる事実誤認の主張ではなく、経験則・論理則違反等の「法令違背」のレベルまで昇華させる必要があることを示唆している。
事件番号: 昭和32(オ)1026 / 裁判年月日: 昭和35年7月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】原審による事実認定や証拠の取捨選択が適法に行われている限り、独自の見解に基づく事実認定の非難は上告理由とはならない。 第1 事案の概要:上告人は、原審(控訴審)における事実認定に、証拠無視、審理不尽、および経験則・採証法則違反があるとして、理由不備または理由齟齬の違法を主張し上告した。しかし、具体…