判旨
一旦終結した弁論を再開するか否かは裁判所の職権による裁量事項であり、当事者は権利として再開を請求し得るものではない。したがって、裁判所は当事者からの弁論再開申請に対し、特段の裁判(諾否の応答)をする必要はない。
問題の所在(論点)
一旦終結した弁論を再開するか否かについて裁判所の裁量が認められるか。また、当事者からの弁論再開申請に対し、裁判所は何らかの判断を示す義務を負うか(弁論再開申請権の成否)。
規範
弁論の再開(民事訴訟法153条参照)は、裁判所の職権による合理的な裁量に委ねられている。当事者に弁論再開を求める訴訟法上の権利は認められないため、再開の申立ては裁判所の職権発動を促す意味を有するにとどまり、裁判所はこれに応答する義務を負わない。
重要事実
上告人は、原審において弁論が一旦終結した後に、弁論再開の申立ておよび新たな証拠申立てを行った。しかし、原審はこれらを無視したまま判決を言い渡した。上告人は、裁判所には弁論を再開して審理を続行する義務、あるいは少なくとも申立てに対して何らかの裁判を行う義務があるにもかかわらず、これを放置した原審の判断は違憲であると主張して上告した。
あてはめ
本件において、上告人が行った弁論再開の申請および証拠申立ては、既に終結した手続を蒸し返すものである。弁論の再開は裁判所の裁量に属する事項であり、当事者に権利として再開を請求する法的根拠はない。したがって、裁判所が申請を無視し、特段の判断を示さずに審理を終了させたとしても、当事者の「裁判を受ける権利」を侵害するものとはいえず、手続上の違法は認められない。
結論
弁論再開の申立てを無視して判決を言い渡した原審の措置は適法であり、上告は棄却される。
実務上の射程
本判例は、弁論再開が裁判所の専権であることを明確にしている。答案上は、弁論終結後の新証拠提出や主張の追加が認められないことの理由付けとして利用できる。ただし、実務上および近時の有力説では、適正手続の観点から、再開しないことが著しく正義に反するような特段の事情がある場合には裁量権の逸脱・濫用となり得ると解される点に留意が必要である。
事件番号: 昭和31(オ)850 / 裁判年月日: 昭和32年5月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】一旦終結した口頭弁論を再開するか否かは、当該裁判所の自由裁量に属する事項である。したがって、当事者が主張するような特段の事情があったとしても、弁論を再開せずに判決を言い渡すことは違法ではない。 第1 事案の概要:上告人は、原審における口頭弁論終結の際、またはその前後の状況に鑑みれば、弁論を再開すべ…
事件番号: 昭和32(オ)543 / 裁判年月日: 昭和35年6月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所は、訴訟が判決をなすに熟すると認めるときは職権で弁論を終結させることができ、一度終結した弁論を再開するか否かは裁判所の合理的な裁量に委ねられる。 第1 事案の概要:上告人は、原審(控訴審)において新たな主張および証拠(新主張・新証拠)の提出を予定していたが、原審裁判所は訴訟が裁判をなすに熟し…