判旨
賃貸借の期間は、特約や特別の規定がない限り、戦争等の不可抗力によって土地の使用が妨げられたとしてもその進行を停止することはない。また、借地権の期間更新は借地法上の要件を充足する場合に限られる。
問題の所在(論点)
1. 戦災等の不可抗力によって賃貸借期間の進行は停止するか。2. 借地法所定の要件を欠く場合に、事実上の事情をもって借地権の更新を認めることができるか。
規範
賃貸借の存続期間は、特約または法律上の特別の規定がない限り、目的物の使用収益が事実上困難な状況が生じたとしても、その進行を停止することはない。また、借地権の更新が認められるためには、借地法(旧法)所定の更新要件(合意更新、建物再築による更新、建物がある場合の更新請求等)を厳格に充足する必要がある。
重要事実
上告人は土地の賃借人であるが、戦災等の事情(戦時罹災土地物件令や罹災都市借地借家臨時処理法の適用対象となる事態)により、一定期間土地の使用収益が制限された。上告人は、かかる不可抗力により賃貸借期間の進行が停止した、あるいは借地権の期間が更新されたと主張して、賃貸借契約の存続を争った。
あてはめ
1. 賃貸借期間の進行停止については、本件において特約が存在せず、また戦時罹災土地物件令3条のような特別規定の適用による停止も認められない。したがって、客観的な期間の経過とともに賃貸借は終了する。2. 借地権の更新については、本件は借地法4条ないし8条(旧借地法)が定める更新事由のいずれにも該当しない。法律に明文の規定がある以上、これらを除外して更新を認める余地はない。
結論
賃貸借期間の進行は停止せず、借地法所定の要件を満たさない限り更新も認められないため、本件賃貸借は期間満了により終了する。
実務上の射程
不可抗力による履行不能や使用不能が生じても、期間の定めのある契約において「期間の進行」そのものが当然に停止するという法理はないことを示す。契約期間の計算という形式的・法的安定性を重視する立場であり、期間延長を求める場合は特約の存在や特別法の具体的な要件充足を主張・立証すべきことを示唆する。
事件番号: 昭和32(オ)347 / 裁判年月日: 昭和34年10月22日 / 結論: 棄却
借地期間の満了から二年余り前に賃貸人から賃借人に対し賃借権の無断譲渡若しくは無断転貸を理由とする契約解除の意思表示があつたからといつて、借地法第六条所定の異議の申述があつたものと解することはできない。