右賃借の申出は有効である。
罹災地上に既に建物の建築を完成した賃借人が罹災都市借地借家臨時処理法第二条の申出をした後所有者の申出拒絶期間内に法令による建築の制限が実施された場合と右賃借の申出の効力。
罹災都市借地借家臨時処理法2条
判旨
罹災都市借地借家臨時処理法2条に基づく借地権設定の申出がなされた際、既に建物が完成している場合には、後の建築制限実施による許可の可否は申出の効力に影響しない。
問題の所在(論点)
臨時処理法2条に基づく借地権設定の申出後、拒絶期間内に建築制限が実施された場合において、既に建物が完成しているときであっても建築許可等の公法的制限が申出の効力に影響を及ぼすか。
規範
罹災都市借地借家臨時処理法2条に基づく賃借の申出に関し、申出時において建築制限が存在せず、かつ、その申出より前に既に建物が完成している場合には、申出拒絶の意思表示をなすべき期間内に建築制限が実施されたとしても、建築許可の要否が申出の有効性を左右することはない。
重要事実
上告人は本件土地の所有者であり、被上告人の夫Dは、昭和21年9月末、上告人に対し建物所有目的で本件土地の賃借権設定の口頭申出(臨時処理法2条の申出)を行った。しかし、本件建物は昭和20年12月25日に既に完成していた。申出の後、上告人が拒絶の意思表示をなし得た3週間の期間内である昭和21年10月4日に、建築制限が実施されるに至った。
あてはめ
Dによる賃借の申出当時、建築に関する法令上の制限は存在していなかった。また、本件建物は申出よりも相当以前(昭和20年12月)に既に完成している。このような場合、建物所有を目的とする借地権設定を認めるにあたって、事後的に導入された建築制限に基づく「建築許可」は、物理的・論理的に問題となり得ない。したがって、申出期間内に建築制限が実施された事実は、有効な申出に基づく借地権成立を妨げる正当な理由にはならない。
結論
上告人(地主)の本訴請求(土地明渡請求等)を容認しなかった原判決は正当であり、本件上告は棄却される。
実務上の射程
戦後の特殊な立法(臨時処理法)に関する判例であるが、公法上の建築制限と私法上の借地権成立の関係において、既に建物が存在する場合には事後の公法制限が私法上の権利形成を阻害しないという一判断を示した点に意義がある。
事件番号: 昭和27(オ)82 / 裁判年月日: 昭和29年7月6日 / 結論: 破棄差戻
罹災都市借地借家臨時処理法第二条第一項但書にいう「建物を築造するについて許可を必要とする場合」とは、警察目的等のために建物を築造するについて事前に許可を要するというような場合をさすのではなく、一定の土地の境域内における建物の建築が一般的に制限されており、ただ許可があるときのみ特にその建築が許される場合を意味する。
事件番号: 昭和35(オ)699 / 裁判年月日: 昭和37年7月6日 / 結論: 棄却
戦災都市における建築物制限に関する法令の施行により普通建物の建築が許されていなかつた当時における借地法第二条の適用を受ける建物所有を目的とする借地契約成立の事実を認定することはさまたげない。
事件番号: 昭和39(オ)754 / 裁判年月日: 昭和41年5月17日 / 結論: 棄却
臨時農地等管理令第七条の二及び第五条の各規定は取締規定であり、右各条所定の地方長官の許可は農地の賃貸借の有効要件ではない。