戦災都市における建築物制限に関する法令の施行により普通建物の建築が許されていなかつた当時における借地法第二条の適用を受ける建物所有を目的とする借地契約成立の事実を認定することはさまたげない。
戦災都市における建築物制限に関する法令施行下の借地法第二条の適用。
借地法2条,戦災都市に於ける建築物の制限に関する件(昭和21年勅令389号)
判旨
戦災後の建築制限法令により普通建物の建築が禁止されていた時期であっても、非堅固建物の所有を目的とする土地賃貸借契約の成立を認めることは妨げられない。
問題の所在(論点)
法令により建築制限が課せられていた時期において、その制限に抵触する内容(非堅固建物の所有)を目的とする土地賃貸借契約の成立を認めることができるか。
規範
建物所有を目的とする土地賃貸借の成否は、当事者の合意の内容及び契約締結の経緯に基づき判断される。当時施行されていた建築制限法令(特別都市計画法等)により、一時使用のための建物のみが許容され普通建物の建築が制限されていたとしても、その事実のみをもって直ちに普通建物(非堅固建物)所有目的の借地契約の成立を否定する根拠とはならない。
重要事実
上告人と被上告人は、昭和23年9月頃、本件土地につき建物所有を目的とする土地賃貸借契約を締結した。当時、戦災都市における建築物制限に関する法令(特別都市計画法等)が施行されており、借地法9条所定の臨時設備等の一時使用建物のみが建築を許され、同法2条の適用を受ける普通建物の建築は制限されていた。上告人は、建築制限がある以上、普通建物所有目的の賃貸借成立を認めた原審の事実認定には誤りがあり、また要素の錯誤がある等と主張して争った。
事件番号: 昭和37(オ)995 / 裁判年月日: 昭和39年2月25日 / 結論: 棄却
一 一時使用のための土地賃借人が七〇才をこえる老人であるからといつて、これに対し右賃貸借を解除して建物収去土地明渡を求めることは、原審確定の事実関係のもとで権利濫用とはいえない。 二 借地契約にあたつて賃借人が第三者の無断建築物を買い取り右居住者を立ち退かせる約定があり、賃借人において、これを買い取つたといういきさつが…
あてはめ
原審が認定した経緯によれば、当事者間には非堅固建物の所有を目的とする賃貸借契約の合意が認められる。たとえ建築制限法令により実際には普通建物の建築が許されない状況にあったとしても、それは私法上の契約の成立自体を左右するものではない。したがって、法令上の制限の存在をもって直ちに賃貸借の成立認定を違法とすることはできず、また当事者の意思表示に要素の錯誤があるともいえない。さらに、昭和23年の契約締結であれば、罹災都市借地借家臨時処理法の適用対象外とする判断も正当である。
結論
建築制限下であっても非堅固建物所有目的の賃貸借契約は適法に成立し、原審の事実認定に違法はない。本件上告を棄却する。
実務上の射程
行政法上の建築制限と私法上の借地契約の有効性・目的の認定は別個の問題である。法令による制限があるからといって、直ちに「一時使用目的」の借地権(借地借家法25条相当)に限定されるわけではなく、当事者の真意に応じた借地権(同法3条等)の成立を認める際の論拠として活用できる。
事件番号: 昭和28(オ)919 / 裁判年月日: 昭和31年6月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸借契約における禁止事項である「容易に収去し難き本建築」の意義は、契約締結に至る経緯や建物の目的、既に存した建物の構造等を総合して解釈すべきである。当初の契約後に作成された書面の条項であっても、既存の建物と同程度の構造を有する建物の建築は、当該禁止事項に抵触しないと解するのが相当である。 第1 …
事件番号: 昭和32(オ)399 / 裁判年月日: 昭和35年3月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借主所有の建物が現存する土地について使用貸借が成立したからといって、当然に土地の使用収益の目的(民法597条2項但書、現598条2項)が定められたと解すべきではない。 第1 事案の概要:上告人は、借主所有の建物が現存する土地について使用貸借が成立したと主張した。その上で、建物が存在する以上、土地の…
事件番号: 昭和35(オ)53 / 裁判年月日: 昭和37年3月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法1条3項の権利濫用について、契約解除権の行使が権利の濫用にあたると解すべき根拠となる事実が認められない場合には、当該解除は有効である。原審が確定した事実関係の範囲内では、解除権の行使を不当とする事情がなく、権利濫用には当たらないとした判断を維持した。 第1 事案の概要:本件は契約の解除権行使の…
事件番号: 昭和29(オ)346 / 裁判年月日: 昭和30年6月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法9条(現・借地借家法25条)の「一時使用」にあたるかは、賃貸借の目的、期間、地上建物の種類・構造、賃料の多寡等から客観的に判断される。本判決は、原審の認定した事実関係に基づき、本件土地の賃貸借が一時使用のためのものであると認めることが可能であると判示し、上告を棄却した。 第1 事案の概要:本…