判旨
税理士法や公認会計士法の規定は、有資格者の指導下で作成された書類や帳簿の記載内容を、必ずしも真実と認めなければならないという趣旨を規定したものではない。したがって、裁判所が自由心証に基づき、それらの帳簿等の記載が過少であり信頼に足りないと判断することは適法である。
問題の所在(論点)
税理士や公認会計士の指導に基づいて作成された書類や帳簿につき、裁判所がその記載内容の真実性を否定し、証拠価値を排斥することは、税理士法や公認会計士法の趣旨に反するか。
規範
税理士法及び公認会計士法の諸規定は、有資格者の関与の下に作成された書類や帳簿について、その記載内容を当然に真実と擬制し、あるいは裁判所の事実認定を拘束するものではない。
重要事実
上告人は、税理士または公認会計士の指導の下で作成された書類および帳簿を証拠として提出した。しかし、原審は証拠調べの結果、当該帳簿における収入金額の記載が実態より過少であり、その内容は信頼するに足りないものと判断した。これに対し、上告人は、有資格者の指導下で作成された書類の信頼性を否定した原判決には、税理士法および公認会計士法に対する法令違背があると主張して上告した。
あてはめ
税理士法や公認会計士法は、専門的知見に基づく適正な申告や会計処理を促進することを目的としているが、有資格者が関与したという一事をもって、その書類の記載が客観的真実であることを法的に保障するものではない。本件において、原審が挙示の証拠に照らして、帳簿の収入金額が過少であると認定し、その証拠力を否定したことは、裁判所の合理的な自由心証の範囲内にある。したがって、専門家の指導下にある帳簿であっても、その実態が真実と異なれば、裁判所はこれを信頼に足りないものと断定できる。
結論
税理士法等の規定は、作成された帳簿の真実性を拘束するものではなく、原審の事実認定に法令違背はない。上告棄却。
事件番号: 昭和32(オ)1156 / 裁判年月日: 昭和33年6月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由として主張された憲法違反が原審で未主張の事実を前提とする場合、または原判決に影響を及ぼさない事実を前提とする場合は、上告理由として不適法である。 第1 事案の概要:上告人が原判決に対して上告を提起し、憲法違反を主張した事案。しかし、その主張の前提となっている事実は、原審(控訴審)では主張さ…
実務上の射程
専門家が作成に関与した書類であっても、民事訴訟における証拠調べにおいては、他の証拠と同様に自由心証による評価の対象となることを示した。証拠の形式的な成立のみならず、実質的な証拠力を争う際、相手方が専門家作成を理由に反論してきた場合の再反論の根拠として利用できる。
事件番号: 昭和32(オ)1027 / 裁判年月日: 昭和35年9月9日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】課税処分の基礎となる事実認定において、重要な証拠の検討を怠り、または経験則に反する不合理な前提に基づいて所得を推認した場合には、審理不尽または理由不備の違法がある。本件では、代用醤油の製造可能性や塩の投下実態を十分に審理せずに所得を算出した原審の判断には、事実誤認を招く手続上の不備が認められる。 …
事件番号: 昭和32(オ)953 / 裁判年月日: 昭和34年2月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】青色申告書の提出がなかったという原審の事実認定に不服を申し立てる上告については、単なる事実誤認の主張にすぎないため、上告理由として採用されない。 第1 事案の概要:上告人は、所得税等に関して青色申告書を提出したと主張したが、原審は青色申告書の提出がなかったものと事実認定した。これに対し、上告人が原…
事件番号: 昭和34(オ)660 / 裁判年月日: 昭和35年11月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が判決の理由を述べる際、第一審判決の理由を引用しつつ、これと矛盾しない範囲で独自の説示を付加して結論を導くことは許される。また、事実認定において個々の証拠判断の理由をいちいち明示しなくても、結論に至る理由が理解可能であれば違法ではない。 第1 事案の概要:上告人は、原審(控訴審)が所得金額を…
事件番号: 昭和35(オ)180 / 裁判年月日: 昭和36年12月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】役員報酬の損金算入の適否を判断するにあたっては、役員の勤務実態、類似営業を行う法人の報酬水準、および会社規模等を総合的に勘案し、客観的な妥当性に基づいて決定すべきである。 第1 事案の概要:上告会社(資本金100万円以下)は、代表取締役Dに対し報酬を支払っていた。京橋税務署長は、Dの実際の勤務状態…