判旨
役員報酬の損金算入の適否を判断するにあたっては、役員の勤務実態、類似営業を行う法人の報酬水準、および会社規模等を総合的に勘案し、客観的な妥当性に基づいて決定すべきである。
問題の所在(論点)
法人税法上の所得計算において、役員報酬が「不当に高額」として損金算入を否認し得るか。また、その適正額の判断はどのような基準(要素)によるべきか。
規範
法人税法上の行為計算の否認(旧法人税法31条の3)または損金算入の可否における「役員報酬の適正額」の判定は、法規裁量に基づくものであり、特定の資料のみに拘束されるものではない。その判断は、①当該役員の職務執行(勤務状態)の程度、②類似営業を行う法人の役員報酬水準、③同規模法人の俸給水準といった客観的な諸事情を総合考慮し、社会通念上客観的に妥当な範囲を確定して行うべきである。
重要事実
上告会社(資本金100万円以下)は、代表取締役Dに対し報酬を支払っていた。京橋税務署長は、Dの実際の勤務状態や東京国税局管内の類似業種の報酬水準、全国の同規模会社の俸給統計に照らし、Dの月額報酬のうち3万円を超える部分は不当に高額であると判断した。同署長は、この過大報酬部分の損金算入を否認し、法人税の更正処分を行った。これに対し、会社側は処分の基礎資料に恣意があるとして、処分の取り消しを求めて提訴した。
あてはめ
本件において、原審は以下の諸点を認定した。まず、Dの会社事務への従事程度(勤務状態)を事実として認定し、これを検討の基礎とした。次に、比較対象として「東京国税局管内の類似営業法人の役員報酬」および「全国の資本金100万円以下の会社の役員俸給」という統計的資料を用いた。これらの外部的な報酬水準とDの勤務実態を対照した結果、月額3万円を超える報酬は客観的に高額であると評価される。当初の更正処分の際に参照された資料と、後の訴訟で示された資料に相違があったとしても、最終的に客観的な資料によって処分の正当性が裏付けられる限り、当該処分は違法とはならない。
結論
役員報酬のうち客観的な妥当性を超える部分は損金に算入できず、これに基づく更正処分は適法である。
実務上の射程
役員給与の過大判定に関するリーディングケースの一つ。答案上は、税法固有の「不当性」の判断基準として、勤務実態・類似同業種比較・会社規模等の「総合考慮」の手法を示す際に引用する。また、更正処分の根拠資料が不十分であっても、客観的な正当性が後から立証されれば処分は維持されるという「処分の客観的適法性」の議論にも活用できる。
事件番号: 昭和32(オ)1081 / 裁判年月日: 昭和33年4月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】税理士法や公認会計士法の規定は、有資格者の指導下で作成された書類や帳簿の記載内容を、必ずしも真実と認めなければならないという趣旨を規定したものではない。したがって、裁判所が自由心証に基づき、それらの帳簿等の記載が過少であり信頼に足りないと判断することは適法である。 第1 事案の概要:上告人は、税理…
事件番号: 昭和49(行ツ)28 / 裁判年月日: 昭和50年2月25日 / 結論: 棄却
資産の延払条件付譲渡に係る確定決算の経理が、翌事業年度に計上すべき賦払金を係争事業年度の収益に計上した点において、法定の延払基準の方法に従つたものでないときは、右違法な部分のみを除外して延払経理による課税の特例の適用を認めることはできない。
事件番号: 平成8(行ツ)138 / 裁判年月日: 平成10年6月12日 / 結論: 棄却
役員に対する退職給与として法人の固定資産である土地をその帳簿価額である二五〇〇万円で現物支給し、右金額について損金経理をしたが、右土地の支給時における適正な価額は少なくとも一億六〇五三万四三六〇円を下るものではなかったという事実関係の下においては、右土地の支給時における適正な価額と帳簿価額との差額は、法人税法三六条にい…
事件番号: 令和2(行ヒ)303 / 裁判年月日: 令和4年4月21日 / 結論: 棄却
1 法人税法132条1項にいう「これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」とは、同項各号に掲げる法人である同族会社等の行為又は計算のうち、経済的かつ実質的な見地において不自然、不合理なもの、すなわち経済的合理性を欠くものであって、法人税の負担を減少させる結果となるものをいう。 2 …