火災保険契約が、保険の目的となつた建物の三分の一の持分に関する部分に限り有効であり、他が無効である場合に、保険金額が右三分の一の持分の時価を超えず、右持分を被保険利益とした保険契約であるとすれば超過保険とならない場合であつても、右保険金額をもつて右持分のみを被保険利益とする保険金額と解釈することはできない。
無効行為の転換が許されない事例。
判旨
建物の共有者が締結した火災保険契約において、自己の持分以外の部分に関する損害を担保する趣旨の金額を、自己の持分に関する損害の担保に加算することは認められない。
問題の所在(論点)
建物の共有持分権者が締結した損害保険契約において、他人の持分に対応する保険金額を、自己の持分に係る損害の填補に充当することが認められるか。すなわち、被担保利益と保険金額の関係を契約内容を超えて拡張できるかが問題となる。
規範
損害保険契約において、被担保利益(保険事故の発生により損害を被るおそれのある利益)と保険金額との関係は、契約の重要な内容を構成し、契約当事者の利害に直接影響を及ぼす。したがって、明文の合意がない限り、特定の被担保利益に対応する保険金額を、他の被担保利益の填補に流用することはできない。
重要事実
建物の共有者の一人である上告人が、当該建物を目的とする保険契約を締結した。上告人は、建物の所有権のうち自己の持分以外の部分に関する損害を担保する趣旨の金額についても、自己の持分に関する損害を担保するために加算して支払われるべきであると主張して上告した。
あてはめ
本件保険契約において、上告人の持分以外の部分に対応する保険金額は、上告人の持分に係る損害を担保するためのものではない。被担保利益と保険金額の関係は契約の根幹に関わる事項であり、当事者の利害に重大な影響を及ぼす。上告人の主張は、契約上画定された被担保利益の範囲を超えて保険金の支払を求めるものであり、契約の本質に反するといえる。したがって、他人の持分に関する保険金額を自己の損害担保に加算する余地はない。
結論
上告人の主張には理由がなく、他人の持分に対応する保険金額を自己の持分に係る損害担保に加算することは認められない。上告棄却。
実務上の射程
損害保険における「利得禁止の原則」や「被担保利益」の特定性を強調する事案で活用できる。共有物件の一部について保険を付した場合、その効力が他の共有者の利益や、自己の利益の拡大解釈に当然には及ばないことを示す論拠となる。
事件番号: 平成1(オ)1351 / 裁判年月日: 平成5年2月26日 / 結論: 棄却
一 譲渡担保権者及び譲渡担保設定者は、いずれも譲渡担保の目的不動産について被保険利益を有する。 二 譲渡担保権者と譲渡担保設定者が別個に譲渡担保の目的不動産について損害保険契約を締結し、その保険金額の合計額が保険価額を超過している場合には、特段の約定のない限り、商法六三二条の趣旨にかんがみ、各損害保険契約の保険金額の割…