一 譲渡担保権者及び譲渡担保設定者は、いずれも譲渡担保の目的不動産について被保険利益を有する。 二 譲渡担保権者と譲渡担保設定者が別個に譲渡担保の目的不動産について損害保険契約を締結し、その保険金額の合計額が保険価額を超過している場合には、特段の約定のない限り、商法六三二条の趣旨にかんがみ、各損害保険契約の保険金額の割合によって各保険者の負担額を決定すべきである。
一 譲渡担保権者及び譲渡担保設定者と目的不動産についての被保険利益 二 譲渡担保権者と譲渡担保設定者が別個に損害保険契約を締結し保険金額の合計額が保険価額を超過している場合と各保険者の負担額の決定方法
民法369条(譲渡担保),商法630条,商法631条,商法632条,商法633条
判旨
譲渡担保設定者と譲渡担保権者は共に被保険利益を有し、双方が別個に保険契約を締結した場合は重複保険に当たらないが、公平の見地から保険金額の割合に応じて各保険者が損害を分担すべきである。
問題の所在(論点)
譲渡担保設定者と権者がそれぞれ同一目的物につき締結した保険契約が、商法上の重複保険に該当するか。また、重複保険に該当しない場合、各保険者の損害分担をどのように決定すべきか。
規範
1. 譲渡担保において、設定者と権者は共に目的物の滅失により経済的損害を受ける関係にあるため、いずれも被保険利益を有する。2. 被保険者が異なる以上、同一目的物に複数の保険契約があっても商法上の重複保険(旧商法632条等)には該当しない。3. もっとも、同一目的物について重複して保険が締結されたのと同様の状態にあることから、特段の事情がない限り、公平の見地から同条の趣旨を類推し、各保険契約の保険金額の割合に応じて負担額を決定すべきである。
重要事実
建物の譲渡担保設定者である被上告人は、上告人(保険会社)との間で火災保険契約(保険金額3000万円)を締結した。一方で、譲渡担保権者であるDも、農業協同組合との間で建物更生共済契約(共済金額2000万円)を締結していた。その後、建物に火災が発生し、2100万円の損害が生じた。被上告人は上告人に対し保険金の支払いを求めたが、他方の共済契約との調整(分担)が問題となった。
あてはめ
まず、譲渡担保の性質上、設定者と権者の双方が被保険利益を有するため、双方の契約は有効である。次に、本件では被保険者が異なるため形式的な重複保険には当たらないが、同一の目的物について保険が重畳している実態がある。そこで、公平の観点から各保険金額の割合(3:2)で按分すべきである。本件損害額2100万円に対し、上告人の負担額は、2100万円 × (3000万円 / 5000万円) = 1260万円と算出される。原審は約款に基づきこれより低い額を認容したが、不利益変更禁止の原則から結論において維持される。
結論
譲渡担保設定者と権者の保険は重複保険ではないが、商法632条の趣旨を類推し、保険金額の割合で按分した額を各保険者が負担する。本件では計算上、上告人は1260万円(及び諸費用)を支払う義務を負う。
実務上の射程
答案上、譲渡担保における被保険利益の帰属を確認する際に有用である。また、被保険者が異なるために重複保険の規定が直接適用されない場面においても、実質的に同一の利益が担保されている場合には、公平の見地から保険金額按分による解決を図るという判断枠組み(商法改正後の現行保険法にも通ずる考え方)として引用できる。
事件番号: 平成19(受)1987 / 裁判年月日: 平成21年6月4日 / 結論: 破棄自判
店舗総合保険契約に適用される普通保険約款中に,洪水等の水災によって保険の目的が受けた損害に対して支払われる水害保険金の支払額につき,上記損害に対して保険金を支払うべき他の保険契約があるときには同保険契約に基づく保険給付と調整する旨の条項がある場合において,同条項にいう「他の保険契約」とは,上記店舗総合保険契約と保険の目…