店舗総合保険契約に適用される普通保険約款中に,洪水等の水災によって保険の目的が受けた損害に対して支払われる水害保険金の支払額につき,上記損害に対して保険金を支払うべき他の保険契約があるときには同保険契約に基づく保険給付と調整する旨の条項がある場合において,同条項にいう「他の保険契約」とは,上記店舗総合保険契約と保険の目的を同じくする保険契約を指す。 (補足意見がある。)
店舗総合保険契約に適用される普通保険約款中に,保険の目的が受けた損害に対して支払われる水害保険金の支払額につき上記損害に対して保険金を支払うべき他の保険契約があるときには同保険契約に基づく保険給付と調整する旨の条項がある場合における,同条項にいう「他の保険契約」の意義
商法629条,商法632条,商法633条,民法91条
判旨
店舗総合保険約款における「他の保険契約」とは、原則として当該保険契約と保険の目的を同じくするものを指し、目的を異にする契約は含まれない。水害保険金は財産的損害を填補する性質上、目的が異なれば利得が生じないため、特記がない限り重複調整の対象外と解するのが相当である。
問題の所在(論点)
店舗総合保険約款14条4項にいう、水害保険金の支払額を調整すべき「他の保険契約」に、保険の目的を異にする保険契約が含まれるか。また、目的を異にする場合でも「1構内」にあることで調整の対象となるか。
規範
保険約款において、他の保険契約がある場合の保険給付の調整条項が適用される「他の保険契約」とは、約款に別段の明示がない限り、当該保険契約と「保険の目的」を同じくする保険契約を指す。水害保険金のような積極保険(財産損害填補)においては、保険の目的が異なれば二重利得が生じるおそれがないため、目的を異にする契約との間での調整は行わないものと解する。
重要事実
上告人は、建物1・2(保育園・老人ホーム)を目的とする店舗総合保険(本件契約)を被上告人と締結した。その後、別の保険会社と別件建物(診療所)を目的とする同種の保険(別件契約)を締結した。豪雨により建物1・2および別件建物が床上浸水を被った。被上告人は、両契約の目的物が「1構内」にあるとして、約款14条4項に基づき、他の保険契約がある場合の調整計算を適用し、保険金を本来の100万円から50万円に減額して支払うと主張した。
あてはめ
本件約款14条4項には、費用保険金(消極保険)に関する1項のような「保険の目的以外のものを含む」との明示がない。水害保険金は損害を直接填補する性質(積極保険)を有し、保険の目的が異なる以上、各契約から給付を受けても実際の損害額を超える利得は生じないため、調整の必要性がない。したがって、建物1・2と目的を異にする別件保険契約は、本件約款14条4項の「他の保険契約」に該当しない。また、補足意見によれば、公道で隔てられ用途も異なる建物群は「1構内」とも認めがたい。
結論
本件保険契約と保険の目的を異にする別件保険契約は「他の保険契約」に該当せず、調整条項は適用されない。被上告人は上告人に対し、減額前の水害保険金100万円を支払う義務がある。
実務上の射程
保険約款の解釈において、積極保険(財産損害)と消極保険(費用損害)の性質の違いに着目し、二重利得の可能性の有無から「他の保険契約」の範囲を確定させる手法を示す。答案上は、約款の文言解釈に加え、保険制度の趣旨(利得禁止の原則)から合理的な限定解釈を導く際の論拠として活用できる。
事件番号: 平成1(オ)1351 / 裁判年月日: 平成5年2月26日 / 結論: 棄却
一 譲渡担保権者及び譲渡担保設定者は、いずれも譲渡担保の目的不動産について被保険利益を有する。 二 譲渡担保権者と譲渡担保設定者が別個に譲渡担保の目的不動産について損害保険契約を締結し、その保険金額の合計額が保険価額を超過している場合には、特段の約定のない限り、商法六三二条の趣旨にかんがみ、各損害保険契約の保険金額の割…