税理士が依頼者のためにした税務申告の手続において過少申告等があった場合に更正等により納付すべきこととなる本税等の税額の全部又は一部に相当する金額につき税理士が依頼者に対して行う支払をてん補しない旨の税理士職業賠償責任保険約款の免責条項は,税理士が依頼者に賠償すべき損害が消費税法(平成13年法律第6号による改正前のもの)37条2項に規定する簡易課税制度選択不適用届出書の提出を怠ったという税理士の税制選択上の過誤により生じたものである場合には,依頼者に有利な課税方式が適用されないことにより形式的にみて過少申告があったとしても,上記損害の賠償については適用されない。
税理士が依頼者に賠償すべき損害が消費税法に定める税制選択に必要な届出書の提出を怠ったという過誤により生じたものである場合における税理士職業賠償責任保険約款の免責条項の適用の有無
民法91条,商法629条,消費税法(平成13年法律第6号による改正前のもの)37条
判旨
税理士職業賠償責任保険において、税理士が届出書の提出を怠る等の税制選択上の過誤により依頼者に生じた損害は、過少申告等の不正を助長するおそれがないため、本来納付すべき税額に相当する額を免責とする特約条項の適用範囲外である。
問題の所在(論点)
不適用届出書の提出を怠るという税制選択上の過誤により生じた損害額(更正額と申告額の差額)が、保険約款上の「本来納付すべき税額」をてん補しないとする免責特約に該当するか。特に、過少申告の不正助長防止という特約の趣旨が、選択上の過誤による場合にも妥当するかが問題となる。
規範
税理士職業賠償責任保険の免責特約(本来納付すべき税額の支払をてん補しない条項)の趣旨は、不正な過少申告にかかわった税理士が、損害賠償を通じた保険金の支払を受けることで納税申告に係る不正を助長することを防止する点にある。したがって、損害が不適用届出書の提出を怠ったという税理士の「税制選択上の過誤」により生じた場合には、形式的に過少申告があったとしても、本特約の適用はないと解すべきである。
重要事実
税理士である上告人は、依頼者から消費税申告業務を委任されたが、有利な「一般の課税方式」を適用するために必要な「簡易課税制度選択不適用届出書」の提出を怠った。その結果、本来選択すべきでない「簡易課税制度」が適用され、税務署長から増額更正を受けた。依頼者は上告人に対し、更正により増額された税額相当額等の賠償を請求。上告人は幹事保険会社に対し、税理士職業賠償責任保険に基づく保険金を求めたが、保険会社は「本来納付すべき税額の全部または一部に相当する金額」はてん補しないとする特約を理由に支払を拒絶した。
あてはめ
本件における損害は、税理士が所定の期限までに不適用届出書の提出を怠ったことにより、依頼者に有利な課税方式の適用を受けられなくなったという「税制選択上の過誤」に起因する。この場合、損害額は不適切な税制が適用された結果として確定した税額と、本来受けるべきであった有利な税額との差額である。このような過誤に伴う損害を保険でてん補しても、不正な過少申告を隠蔽・助長するものではない。よって、形式的に過少申告の態様を呈していても、特約条項の趣旨目的には抵触しないといえる。
結論
本件損害には特約条項の適用はなく、保険会社は免責されない。原審の判断には法令の違反があるため、破棄差し戻しとする。
実務上の射程
保険免責条項の解釈において、文言の形式的該当性だけでなく「条項の趣旨(不正助長防止)」から実質的に制限解釈を行う手法を示す。税理士の注意義務違反の類型(単純な計算ミス・不正加担 vs 制度選択のミス)を区別して論じる際に有用であり、依頼者が本来負担しなかったはずの過大な税負担が「損害」といえる場面で本法理を適用する。
事件番号: 平成3(オ)770 / 裁判年月日: 平成4年12月18日 / 結論: 棄却
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