判旨
家屋の不法占有による損害賠償の範囲は、特段の事情がない限り、当該家屋を他に賃貸して得られたであろう賃料相当額と推定される。
問題の所在(論点)
家屋の不法占有に基づく損害賠償請求において、所有者に当該家屋を他に賃貸する具体的な意思がない場合であっても、賃料相当額の損害を請求できるか(民法709条の損害の範囲)。
規範
家屋の所有者が不法占有を理由に請求し得る損害賠償の範囲は、特段の事情のない限り、当該家屋を他に賃貸して収得し得たであろう家賃相当額の損害を被るものと推定される。
重要事実
家屋の所有者である被上告人が、家屋を不法に占有している上告人に対し、損害賠償を請求した事案。第一審では被上告人に賃貸の意思がないことが認定されていたが、第二審(原審)ではそのような認定はなされず、賃料相当額の損害が認められたため、上告人がこれを不服として上告した。
あてはめ
本件において、原審は被上告人に賃貸の意思がないとの事実は認定していない。家屋の所有権が侵害されている以上、所有者はその交換価値または使用価値を享受する権能を阻害されているといえる。したがって、特段の事情が認められない限り、客観的な使用価値である賃料相当額を損害として把握することが正当化される。上告人が主張するような信義則違反も認められない。
結論
家屋の不法占有による損害は、原則として賃料相当額と認められる。原審の判断に違法はなく、本件上告は棄却される。
実務上の射程
不法占有における損害論の基本判例である。所有者の賃貸意思の有無にかかわらず「賃料相当額」を損害と推定する実務を確立した。答案上では、損害の発生を基礎づける際に「使用収益権能の侵害」を理由として、この推定規範を適用すれば足りる。反証(特段の事情)としては、物理的に使用不可能な状態であった場合などが想定される。
事件番号: 昭和38(オ)392 / 裁判年月日: 昭和39年8月20日 / 結論: 棄却
賃貸借終了後の損害金としての金員請求は、「賃貸借が原告主張の時点より後に終了したとすれば、その時までは賃料として請求する」との趣意を含むと解するのが一般であるが、本件における事情(当審判決理由参照)のもとにおいては、賃料請求としての趣意を含むものと解するのは相当でない。
事件番号: 昭和42(オ)182 / 裁判年月日: 昭和42年5月25日 / 結論: 棄却
(省略)
事件番号: 昭和32(オ)886 / 裁判年月日: 昭和34年7月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物賃貸借の解約申入れにおける正当事由(借地借家法28条参照)の主張として、建物の荒廃と改造の必要性を挙げる場合、その目的が劇場経営等であれば、改造の程度内容や資金調達方法の詳細までを主張する必要はない。 第1 事案の概要:賃貸人(被上告会社)は、本件建物を使用して劇場を経営する計画を立てていた。…
事件番号: 昭和30(オ)468 / 裁判年月日: 昭和32年11月15日 / 結論: 棄却
権利金の受領が地代家賃統制令により禁止されている場合において、借主が貸主に対し権利金の支払を約し、法律上その支払義務のないことを知りながらこれを支払つたときは、他に特段の事由のないかぎり、民法第七〇五条により、借主は右権利金の返還を請求することはできない。
事件番号: 昭和41(オ)215 / 裁判年月日: 昭和41年6月24日 / 結論: 棄却
土地の不法占拠により土地所有者の蒙る損害額を、右土地を他に賃貸することにより通常得べかりし賃料相当額にあたる、と判断した点に違法はない。