判旨
再審事由としての判断遺脱(民訴法338条1項9号)は、判決に影響を及ぼすべき重要事項について判断が漏れていることを指し、当該事項の判断が必要ないと判示した場合は判断遺脱に当たらない。
問題の所在(論点)
本案判決において財産帰属に関する判断を積極的に行わなかったことが、民事訴訟法上の「判決に影響を及ぼすべき重要な事項についての判断遺脱」や「確定判決との矛盾抵触」という再審事由に該当するか。
規範
再審事由としての「判決に影響を及ぼすべき重要な事項につき判断を遺脱したとき」とは、裁判所が当事者の主張した重要な攻撃防御方法について何ら判断を示さなかった場合をいう。当該事項が請求の成否に影響しない旨を判旨において示している場合には、判断の遺脱には当たらない。また、確定判決との抵触(同項10号)については、後訴判決が前訴確定判決の対象事項について積極的に矛盾する判断をなしたことが必要である。
重要事実
再審被告法人が宗教法人として成立しているか否かが争われた本案訴訟の上告審において、裁判所は、財産の所有は宗教法人の成立要件ではないとの理由から、財産関係の認定判断は不要である旨を判示した。これに対し、再審原告は、①財産の帰属に関する判断を遺脱したこと、および②財産の帰属を認めた別の確定判決と本案判決が矛盾抵触することを理由に、再審の訴えを提起した。
あてはめ
本案判決は、宗教法人の成立に財産所有は不要であると解し、財産関係の認定は不要である旨を判旨において逐一明示している。これは法律上の判断を要する事項について判断を示したものといえ、単なる判断の看過(遺脱)ではない。また、財産関係について積極的な認定判断を行っていない以上、財産帰属を認めた別の確定判決との間で論理的に矛盾し抵触する関係にも立たない。
結論
本件再審の訴えには再審事由が認められず、また期間経過後に提出された主張も不適法であるため、却下を免れない。
事件番号: 昭和28(オ)1334 / 裁判年月日: 昭和31年3月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】宗教法人令に基づく神社の設立において、財産に関する事項は神社規則の必要的記載事項ではなく、財産の存否は設立自体の効力に影響を及ぼさない。 第1 事案の概要:上告人らは、被上告人である神社の設立登記の抹消を求めて提訴した。その理由として、神社の財産関係に関する主張が適切に判断されていないことや、財産…
実務上の射程
裁判所が「判断の必要なし」と明示した事項については、それが不当であっても「判断内容の不服」に過ぎず、判断遺脱(9号)の問題にはならないという限界を画定した。再審事由の厳格な解釈を示す実務上の指針となる。
事件番号: 昭和32(ヤ)7 / 裁判年月日: 昭和32年12月20日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】再審の訴えにおいて、主張される事実が民事訴訟法(旧法)420条1項所定の再審事由のいずれにも該当しない場合には、当該再審の訴えは不適法として却下される。 第1 事案の概要:再審原告は、最高裁判所の確定判決に対し、別紙記載(本判決文上は省略)の事由を根拠として再審の訴えを提起した。再審原告が主張した…
事件番号: 昭和32(ヤ)25 / 裁判年月日: 昭和34年4月23日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】上告裁判所は不服申立ての限度でのみ調査義務を負うため、上告理由として主張されていない事項や、適法な期間経過後に提出された補充書記載の事項について判断を示さなくとも、判決に影響を及ぼすべき重要な事項の判断遺脱(民事訴訟法第338条1項9号)には当たらない。 第1 事案の概要:再審原告は、前審の上告判…
事件番号: 昭和33(オ)272 / 裁判年月日: 昭和35年6月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】再審事由である「判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断を遺脱したこと」(民訴法338条1項9号)とは、当事者の主張があるにもかかわらず判断を脱漏した場合を指し、当事者の主張がない事項については判断遺脱に当たらない。 第1 事案の概要:上告人は、福岡地裁昭和30年(ワ)第917号の確定判決に対…