判旨
再審の事由(旧民訴法420条1項9号、現行338条1項9号)は、判決に影響を及ぼすべき重要事項の遺脱がある場合に認められるが、主張された事由が判決の基礎となる法的判断を左右しないことが明白であれば、再審の訴えは不適法として却下される。
問題の所在(論点)
前訴において否定された譲与義務の根拠規定(昭和22年法律53号の準用)に関する主張が、再審事由としての「判決に影響を及ぼすべき事項の遺脱」に該当し、再審の訴えが適法と認められるか。
規範
再審の事由(民事訴訟法338条1項9号参照)が認められるためには、主張された事由が「判決に影響を及ぼすべき事項」であることを要する。前訴判決の前提となる法律の解釈・適用に関する判断が、当該事由によって左右されないことが明白である場合には、同号の再審事由には当たらない。
重要事実
再審原告は、憲法89条および地方自治法212条の趣旨に基づき、昭和22年法律53号の準用によって再審被告が本件不動産を譲与する義務があると主張し、前訴を提起した。前訴の第一審、第二審および上告審は、同法律が地方公共団体所有の財産には適用されず、憲法等の趣旨によっても当然に準用されるものではないとして、譲与義務を否定する判断を下した。これに対し、再審原告が再審の訴えを提起したものである。
あてはめ
前訴においては、本件不動産に対して昭和22年法律53号が適用・準用されないことが確定的な法的判断として示されている。再審原告が再審請求原因として主張する事由は、この前訴判決の根拠となった法律適用の適否を左右するものではなく、原審判決に影響を及ぼす事項でないことが明白である。したがって、旧民訴法420条1項9号(現338条1項9号)の要件を欠くといえる。
結論
本件再審の訴えは不適法であり、却下すべきである。
事件番号: 昭和32(ヤ)21 / 裁判年月日: 昭和32年12月6日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】再審の訴えにおいて、訴状に記載された事由が民事訴訟法所定の再審事由(旧420条1項各号、現338条1項各号)のいずれにも該当しない場合には、当該再審の訴えは不適法として却下される。 第1 事案の概要:再審原告は、最高裁判所の確定判決に対し、「再審の上訴」と題する書面を提出して再審の訴えを提起した。…
実務上の射程
本判決は、再審事由の存否を判断するにあたり、主張された事項が実体上の判断(判決の主文)を導く論理過程において影響を及ぼさないことが明らかな場合には、直ちに訴えを却下できることを示している。答案上は、再審事由の「判決に影響を及ぼすべき事項」の意義を論じる際の考慮要素として活用できる。
事件番号: 昭和32(ヤ)25 / 裁判年月日: 昭和34年4月23日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】上告裁判所は不服申立ての限度でのみ調査義務を負うため、上告理由として主張されていない事項や、適法な期間経過後に提出された補充書記載の事項について判断を示さなくとも、判決に影響を及ぼすべき重要な事項の判断遺脱(民事訴訟法第338条1項9号)には当たらない。 第1 事案の概要:再審原告は、前審の上告判…
事件番号: 昭和33(ヤ)9 / 裁判年月日: 昭和34年1月22日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】再審の訴えが適法と認められるためには、民事訴訟法(昭和23年改正前)420条1項各号(現行338条1項各号)に規定された再審事由のいずれかに該当する必要がある。 第1 事案の概要:再審原告は、確定判決に対して再審の訴えを提起した。しかし、再審原告が主張する事由は、当時の民事訴訟法420条1項(現行…
事件番号: 昭和30(オ)304 / 裁判年月日: 昭和31年11月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】訴の変更の許否は裁判所の職権調査事項であり、請求の基礎に変更がある場合には、たとえ交換的変更の形式であってもその変更は許されない。 第1 事案の概要:上告人(原告)は、第一審において、従前の請求の趣旨および原因を全面的に変更する訴の変更(交換的変更)を行った。これに対し被上告人(被告)は、第一審の…
事件番号: 昭和33(ヤ)22 / 裁判年月日: 昭和34年6月4日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】再審事由としての「判決に影響を及ぼすべき重要な事項につき判断を遺脱したこと」(民訴法338条1項10号)の成否について、上告審判決が上告理由に対し、独自の理由に基づき上告を採用し得ない理由を説示している場合には、判断遺脱の違法は認められない。 第1 事案の概要:再審原告は、上告審判決が、控訴審判決…