判旨
上告審において初めて主張された新事実は、原審で確定されていない限り、上告理由の前提とすることはできず、これに基づく法令違法や判例違反の主張は認められない。
問題の所在(論点)
上告審において、原審で主張・確定されていない新たな事実(本件では建物の分割可能性)を前提として、原判決の法令適用の違法や判例違反を主張することができるか(民事訴訟法上の事実拘束性の範囲)。
規範
上告審は事後審であり、原則として原判決が確定した事実に拘束される。したがって、原審で主張されず、かつ原判決によって確定されていない新たな事実を前提として、原判決の法令適用や判例違反を論じることは許されない。
重要事実
上告人は、対象となる建物が四戸建であり分割可能であるという事実を前提に、原判決の法令適用や判例違反を主張した。しかし、この「四戸建であり分割可能である」という事実は、原審において全く主張されておらず、原判決もこれを確定していなかった。
あてはめ
上告人が主張する事実は原審で全く現れていない。原判決が確定していない事実を前提とする以上、その論旨は原判決の判断に照らして正当性を欠く。また、引用された判例も事実関係を異にする事案に関するものであり、本件への適用は適切ではない。ゆえに、原判決に不当な法律適用や判例違反があるとは認められない。
結論
本件上告は棄却される。原審で確定されていない新事実に基づく主張は、上告理由として採用し得ない。
実務上の射程
民事訴訟における上告審の性格(法律審・事後審)を示す基本的な判断である。答案上は、上告理由の当否を論じる際、原審で認定されていない事実を前提とした議論が許されないことを指摘する場面で活用する。また、事実関係が異なる判例の援用が「判例違反」を構成しないことを示す一例としても機能する。
事件番号: 昭和33(オ)1064 / 裁判年月日: 昭和35年2月25日 / 結論: 棄却
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事件番号: 昭和33(オ)345 / 裁判年月日: 昭和34年8月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告審において、原審で主張していなかった新たな事実上の主張を基礎として原判決の違法をいうことは、民事訴訟の手続上許されない。 第1 事案の概要:上告人(賃借人)は、被上告人(賃貸人)からなされた月額5,000円の延滞賃料の催告に基づく契約解除を争っていた。上告人は、上告審において、当該催告より以前…