判旨
白地の約束手形振出人は、白地部分が補充され、かつ支払のための呈示がなされた時において初めて遅滞の責任を負う。したがって、呈示の日以前に支払われた金員は、遅滞損害金が発生していない以上、手形債務の元本に充当される。
問題の所在(論点)
白地の約束手形の振出人が履行遅滞に陥る時期はいつか。また、手形要件の補充および呈示前になされた支払は、損害金と元本のいずれに充当されるべきか。
規範
白地の約束手形振出人は、手形要件が補充され、かつその呈示を受けた時に初めて履行遅滞の責に任ずる。それゆえ、適法な呈示がなされる前においては、遅滞損害金債務は発生しない。
重要事実
上告人は、被上告人に対し、白地部分のある約束手形を振り出した。その後、当該手形の白地部分が補充され、被上告人によって支払のための呈示がなされた。上告人は、この呈示がなされる前の時点において、本件手形に関連する金員を被上告人に対して支払っていた。
あてはめ
本件では、手形要件が補充された上で呈示された日の翌日以降についてのみ損害金の支払義務が認められる。呈示より前の時点では損害金債務自体が発生していないため、その期間内に支払われた金員は、存在しない損害金に充当される余地はなく、当然に手形債務の元本に充当されることとなる。
結論
白地手形の振出人は、補充後の呈示により遅滞に陥る。呈示前の支払は元本に充当される。
実務上の射程
白地手形を利用した取引における遅滞責任の発生時期を明確にした判例である。手形債務の発生・行使には手形要件の具備と呈示が必要であるという原則を、履行遅滞の局面にも適用した点に意義がある。答案上は、遅滞損害金の起算点や弁済の充当順序が問題となる事案で、損害金債務の不発生を論証するために用いる。
事件番号: 昭和34(オ)500 / 裁判年月日: 昭和35年4月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】白地手形の所持人が白地部分を有効に補充した上で、口頭弁論期日において振出人に手形を呈示した場合、主債務者に対する請求として有効であり、呈示後の手形法所定の利息を含めた支払請求が認められる。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は、上告人(被告)が振り出した白地部分のある約束手形を所持していた。被上告…