仮処分の執行として執行吏が適法に選任した保管人の不法行為によつて生じた損害については、右選任につき執行吏に過失がないかぎり、国に賠償責任はない。
仮処分の執行として執行吏が適法に選任した保管人の不法行為と国の損害賠償責任の有無。
判旨
執行吏によって適法に選任された保管者は、国家賠償法1条1項にいう公務員には当たらず、その選任について執行吏に過失がない限り、保管者の行為による損害について国は賠償責任を負わない。
問題の所在(論点)
執行吏によって選任された民間の保管者が、国家賠償法1条1項にいう「公務員」に該当するか。また、保管者の行為による損害について、選任者である執行吏に過失がない場合でも国は責任を負うか。
規範
国家賠償法1条1項の責任が認められるためには、公務員がその職務を行うについて故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたことが必要である。執行吏が適法な権限に基づき選任した保管者は、同条にいう公務員には該当せず、また執行吏の手足の延長や補助機関とも解されない。したがって、保管者の選任・監督について執行吏自身に過失が認められない限り、国は賠償責任を負わない。
重要事実
上告人(原告)らは、執行吏代理Dが船舶の仮処分執行に際し、権限に基づきEを保管者として選任したが、その後に当該船舶が滅失したため損害を被ったと主張した。上告人らは、保管者Eは国家賠償法上の公務員または執行吏の補助機関にあたり、その過失による損害について国が賠償責任を負うべきであるとして訴えを提起した。
あてはめ
本件では、執行吏代理Dが仮処分決定に基づく適当な方法としてEを保管者に選任しており、この選任行為自体に故意や過失は認められない。また、保管者Eは執行吏の公権力の行使を補助する立場にあるとはいえず、国賠法上の公務員には該当しない。さらに、Eを執行吏の手足の延長や補助機関と解することもできない。国家賠償法4条が準用する民法規定(寄託等)を考慮しても、執行吏自身に過失がない本件においては、国が損害賠償責任を負う根拠はない。
結論
執行吏により選任された保管者は公務員ではなく、その選任・執行方法に過失がない以上、国は国家賠償法上の損害賠償責任を負わない。上告棄却。
実務上の射程
国賠法1条の「公務員」の範囲を画定する際、公的な権限行使の外部委託先(保管者等)が直ちに公務員に含まれるわけではないことを示す。補助機関や手足として評価できるかどうかが実務上の判断のポイントとなる。
事件番号: 昭和46(オ)665 / 裁判年月日: 昭和47年3月21日 / 結論: 棄却
国家賠償法一条の解釈として公務員個人が賠償責任を負わないものとしても、これによつて被害者たる原告はなんらの不利益を被るものでもないから、同人は右規定が憲法一四条に違反する旨を主張する利益を有しない。