判旨
事業分離の過程で一方が代表して資材割当を受け、他方に分配する合意がある場合、その分配行為は実質的に共同で割当を受けたものといえ、臨時物資需給調整法上の「譲渡」に該当しない。
問題の所在(論点)
事業分離の過程において、一方が代表して割当を受けた資材を他方に分配する行為が、臨時物資需給調整法に定める制限対象としての「譲渡」に該当するか。
規範
法規が禁止する「譲渡」に該当するか否かは、単なる形式的な名義の移転のみならず、当該取引の経緯、目的、および実態を総合的に考慮して判断すべきである。特に、事業の合体・分離に伴う暫定的な措置として、共同の利益のために一方の名義で資材を確保し、これを内部的に分配する行為は、実質的な共同受領と評価でき、禁止される「譲渡」には当たらない。
重要事実
上告会社と被上告人は、かつて事業を合体させていたが、その分離にあたり契約を締結した。被上告人が「独立自営をなすに至る時」まで、分離前と同様に上告会社の名義で商工省から資材の割当を受け、両者の間で一定の比率によりこれを分配する方法が採られていた。その後、上告会社は被上告人に対し、税金や光熱費の立替金不払等を理由に契約解除を主張するとともに、資材の分配が臨時物資需給調整法上の禁止される「譲渡」にあたり無効であると主張した。
あてはめ
本件における資材分配は、事業合体分離の経緯から生じた一策であり、被上告人が完全に独立自営できる体制(業者組合加入および直接の資材割当受領)が整うまでの暫定的な措置であった。上告会社が資材割当を受けることは、実態として上告会社と被上告人の共同名義で割当を受けるのと同視できる性質を有している。したがって、約定の比率に基づき一部を引き継がせる行為は、対価を伴う独立した「譲渡」ではなく、実質的な共同割当資材の内部的分担にすぎないといえる。
結論
本件資材の分配は、臨時物資需給調整法に定める「譲渡」には当たらず、当該合意は有効である。
実務上の射程
行政法規による譲渡制限がある場合でも、実質的に共同事業や内部的分担と評価できる事情があれば、私法上の合意の有効性が維持される可能性を示す。契約解釈において「独立自営」等の文言を、単なる形式(組合加入)ではなく、実効性(資材の直接受領可能性)から判断した点も実務上重要である。
事件番号: 昭和33(オ)97 / 裁判年月日: 昭和34年2月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】証拠の取捨選択は原審の専権行使に委ねられており、特定の証拠を引用・説示しなかったとしても、認定に資した他の証拠と矛盾しない限り、直ちに違法とはならない。 第1 事案の概要:上告人は、原判決が特定の書証(乙第3号証の1)を引用・説示せずに事実認定を行ったことについて、証拠の取捨選択に違法があるとして…