原告が物品を被告に売り渡したと主張して、売買代金の請求をなす訴訟において、裁判所が右物品は被告および訴外人の共同買受にかかるものと判断したとしても、「申立テサル事項ニ付判決ヲ為」したことにはならない。
「申立テサル事項ニ付判決ヲ為」したことにあたらない一事例
民訴法186条
判旨
売買代金の全額請求に対し、裁判所が共同買受の事実を認定してその全額または半額の支払いを命じることは、処分権主義を定めた民事訴訟法246条(旧186条)に違反しない。
問題の所在(論点)
原告が被告を「単独の買主」として代金全額を請求している場合に、裁判所が「共同買受」の事実を認定し、その全部または一部(分割債務)の支払いを命じることは、処分権主義(旧民訴法186条、現246条)に抵触するか。
規範
処分権主義(民訴法246条)の観点から、申立ての範囲と判決の内容に乖離があるかが問題となる。被告が単独買主であるとして代金全額を請求している場合に、共同買受が認められるときは、分割債務(民法427条)として半額の支払いを命じることは「一部認容」として許容される。また、商行為による連帯債務(商法511条1項)が成立する場合には、依然として全額の請求が認められるに過ぎず、申立ての範囲を逸脱しない。
重要事実
原告(被上告人)は、被告(上告人)が単独の買主であると主張して、売買代金の全額の支払いを求めて提訴した。これに対し原審は、弁論の全趣旨に基づき、被告と他1名の共同買受であると事実認定した。その上で、商法511条の適用等により被告に対し代金全額の支払義務を認めた(あるいは分割債務として一部認容を示唆した)。被告側は、単独買受を前提とした請求に対し共同買受を認めて判決を下すことは、当事者の申し立てていない事項について判決するものであり、処分権主義に違反すると主張して上告した。
あてはめ
まず、被告が単独買主であれば代金全額の支払義務を負う。次に、被告と他1名の共同買受であっても、商法511条の適用等により連帯債務となる場合は、被告は依然として代金全額の支払義務を負うため、請求の範囲内である。仮に連帯債務とならず民法427条により分割債務となる場合であっても、代金全額の請求に対してその半額(一部分)の支払いを命じることは、質的な一部認容に相当する。したがって、いずれのケースにおいても当事者の申立ての範囲を逸脱するものとはいえない。
結論
裁判所が共同買受を認めて代金の支払いを命じることは、処分権主義に違反しない。
実務上の射程
訴訟物たる権利(売買代金支払請求権)の同一性が保たれている限り、その発生原因となる事実(単独買受か共同買受か)に相違があっても、申立ての範囲内での認容であれば処分権主義違反とはならないことを示す。実務上は、一部認容の可否や、主要事実の認定における弁論主義との限界が問題となる場面で参照される。
事件番号: 昭和31(オ)893 / 裁判年月日: 昭和32年11月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者が売買契約の成立を主張している場合、裁判所がその代理人によって契約が締結されたと認定しても、処分権主義(民訴法246条)には反しない。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は、上告人(被告)との間に売買契約が成立したと主張して訴えを提起した。これに対し、原審(控訴審)は、当該売買契約が被上告人…