一船分の木材を二人が共同して買つた場合において、目的物について不可分の特約がなされる等特段の事情のないかぎり、買主両名の債務は可分債務であると解すべきである。
一船分の木材を二人が共同して買つた場合の買主の債務の性質
民法427条
判旨
共同買主による代金支払債務は、目的物の性質上または特約により不可分と認められない限り、民法427条の原則により可分債務となる。
問題の所在(論点)
数人が共同で物品を買い受けた場合、その代金支払債務は当然に不可分債務となるか。民法427条の適用範囲と不可分性の判断基準が問題となる。
規範
数人の債務者が引き受ける債務は、別段の意思表示がない限り、各債務者が等しい割合で義務を負う可分債務となる(民法427条)。共同買主による代金支払債務が不可分債務(同428条)となるためには、契約の目的物の性質上、給付が不可分であるか、または当事者間に不可分とする特約が存在することを要する。
重要事実
上告人(売主)は、被上告人と訴外会社(共同買主)との間で、杉丸太(約5000石)の売買契約を締結した。この契約は、買主各々が分量を分割して契約した事実は認められず、両名を共同買主とする一つの売買契約であった。売主は、買主の一方である訴外会社の役員に対し、全目的物を引き渡したと主張したが、他方の買主である被上告人がその引渡しにつき代理権を与えていた事実等は認められなかった。また、その後、売主の代理人と被上告人との間で契約の処理に関する交渉が行われ、暗黙のうちに合意解除が成立したと認定された。
あてはめ
本件売買契約において、目的物である杉丸太の代金支払債務は、その性質上、不可分な給付であるとは認められない。また、契約当事者間において、代金支払債務を不可分とする旨の特約(連帯の合意等)が締結された事実も認められない。したがって、本件売買契約に基づく買主両名の債務は、民法427条により分割された可分債務として扱われるべきである。また、契約自体もその後の交渉により暗黙のうちに合意解除されたものと解される。
結論
共同買主の債務は、特段の事情がない限り可分債務であり、本件では合意解除も認められるため、上告人の請求は棄却される。
実務上の射程
共同債務における分割債務の原則(427条)を確認した事例である。実務上、共同買主には「連帯して支払う」との特約を設けるのが通常であるが、そのような明示の合意や目的物の性質上の不可分性がない限り、債権者は各債務者に対して分割された範囲でしか請求できない点に注意を要する。
事件番号: 昭和35(オ)602 / 裁判年月日: 昭和35年11月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約において、複数の者が共同買主となった場合、当該取引の性質や証拠に基づき、共同買主全員が契約の当事者として権利義務を負うと認定される。 第1 事案の概要:上告人と訴外Dが関与した本件取引において、原審は挙示された証拠に基づき、上告人とDの両名が共同買主となったものと事実認定した。これに対し上…