判旨
解除権者が契約の存続と全く相容れない請求を訴訟においてなしたときは、訴訟行為により黙示の解除の意思表示をしたものと解され、訴状が相手方に送達された時に解除の効力が生ずる。
問題の所在(論点)
訴訟上の請求をもって、実体法上の契約解除の意思表示がなされたと認めることができるか。また、その場合の解除の効力発生時期はいつか。
規範
解除権を有する者が、訴訟において当該契約の存続と全く相容れない内容の請求を行った場合、その訴訟行為自体に契約解除の意思表示が黙示的に含まれていると解するのが相当である。この場合、解除の効力は、当該意思表示を含む書面(訴状等)が被告に送達された時点で発生する。
重要事実
買受人(被上告人)が、売渡人(上告人)との間で行った宅地売買契約に関し、訴状において「支払った手附金30万円の返還および契約条項に基づく同額の違約金の支払を請求する」旨を記載し、訴えを提起した。原審は、この請求が契約の存続と相容れないものであるとして、訴状の送達により契約が解除されたものと判断した。これに対し、売渡人側が解除の効力発生時期等を争い上告した。
あてはめ
本件訴状には、既払の手附金返還と契約所定の違約金支払を求める旨が明記されている。このような請求は、契約の円滑な履行を前提とするものではなく、むしろ契約の解消を前提とした原状回復および損害賠償の請求に他ならない。したがって、被上告人は本件売買契約の存続と全く相容れない請求をなしたことが明白であり、訴状の送達をもって黙示の解除の意思表示が相手方に到達したものと評価できる。
結論
契約の存続と相容れない請求を訴訟上で行うことは、黙示の解除の意思表示に該当する。したがって、訴状送達時に契約は解除されたとする原判決の判断は正当である。
実務上の射程
契約解除の意思表示を事前に送達していない場合であっても、訴状における請求の内容(代金返還請求や違約金請求など)から解除の意思を読み取ることができる。実務上、解除の要件を満たしているが通知を失念している事案において、訴状送達による解除の効力を主張する際の根拠となる。
事件番号: 昭和30(オ)900 / 裁判年月日: 昭和32年3月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】訴状に「委託金の返還を請求する」旨の記載がある場合、当該訴状の送達によって委託契約解除の意思表示がなされたものと解するのが相当である。 第1 事案の概要:上告人と被上告人との間で委託契約(詳細は判決文からは不明)が締結され、これに伴い委託金が交付されていた。その後、被上告人は上告人に対し、本件委託…
事件番号: 昭和32(オ)495 / 裁判年月日: 昭和35年3月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約の解除を主張するにあたり、解除の意思表示が単なる事情の説明に留まらず、予備的な主張としてなされたといえるためには、文言上その趣旨が明らかでなければならない。また、催告を欠く解除の意思表示は、有効な解除としての効力を認められない。 第1 事案の概要:不動産の売買契約において、売主(上告人)が…