判旨
破産管財人が登記名義の移転を求める契約に基づき請求する場合、その結果が否認権行使と同様であっても、それは契約の効果であって否認権の行使とは無関係である。また、表意者が意思と表示の不一致を自覚している場合は錯誤にあたらず、動機の錯誤が法律行為の内容として表示されない限り無効を主張できない。
問題の所在(論点)
1. 契約に基づく登記移転請求が否認権の行使に該当するか。2. 表意者が意思と表示の不一致を自覚している場合に、錯誤の主張が認められるか。3. 動機の錯誤が法律行為の内容として表示されていない場合に、錯誤の効果を主張できるか。
規範
1. 破産管財人が契約に基づき登記名義の移転を求める場合、それは契約上の履行請求であり、否認権(破産法上の制度)の行使とは別個の法律行為である。2. 法律行為の要素に錯誤があるというためには、表意者が意思と表示の不一致を知らないことを要し、不一致を自ら知っている場合には錯誤は成立しない。3. いわゆる動機の錯誤(縁由の錯誤)は、その事実が意思表示の内容として表示されない限り、法律行為の無効(現在の取消し)を基礎づけるものではない。
重要事実
破産会社の破産管財人(被上告人)が、本件不動産の登記名義を破産会社に移転する旨の契約に基づき、上告人に対してその履行を求めた。これに対し、上告人は、①本請求が実質的に否認権の行使にあたり違憲であること、②本件不動産の所有権が破産会社にあると認めた点に錯誤があること、③自己の所有物を譲渡する真意であったため所有権帰属の承認には錯誤があること等を主張して争った。
あてはめ
1. 本件請求は、不動産の登記名義を移転する旨の「契約」に基づきその履行を求めるものであり、破産法所定の否認権を行使するものではない。よって、結果として否認権行使と同一の帰結になっても、それは契約の効力にすぎない。2. 上告人は、所有権が破産会社に帰属することを承認した点につき、それが「真意ではない」と主張しているが、これは不一致を自ら知っていたことを意味するため、錯誤にはあたらない。3. 上告人が主張する錯誤の事由は単なる「縁由(動機)の錯誤」にすぎず、かつ、その動機を意思表示の内容として表示した事実は原審で認定されていない。
結論
1. 契約に基づく請求は否認権行使とは無関係であり有効である。2. 意思と表示の不一致を自覚している場合、または動機が表示されていない場合には錯誤の抗弁は認められない。上告棄却。
事件番号: 昭和31(オ)1013 / 裁判年月日: 昭和33年3月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者間に不動産の所有権の帰属や、過去の調停条項が指し示す建物の特定について争いがある場合、互いに譲歩して紛争を終結させる合意は和解契約としての効力を有する。 第1 事案の概要:上告人は昭和21年8月以降、松山市内の土地家屋(通称D)を使用してきたが、その所有権がEに留保されているのか、上告人に移…
実務上の射程
契約による解決が否認権行使の潜脱にあたらないことを示唆する。また、錯誤の成立要件として「不一致の不知」が必要であること、及び動機の表示が必要であることを再確認する際、民法95条の解釈において実務上活用できる。
事件番号: 昭和31(オ)943 / 裁判年月日: 昭和35年8月26日 / 結論: 棄却
一 後見人の職務執行停止の仮処分命令において、後見人に対する職務執行停止の効力はその命令正本が当該後見人に送達されたときに生ずる。 二 甲所有の不動産を、その後見人乙が代理して丙に譲渡し、乙の職務執行停止の仮処分がなされた後乙は丙のために移転登記をなし、ついで丙は同不動産を丁に譲渡し移転登記をした場合に、甲は丁に対して…
事件番号: 昭和33(オ)554 / 裁判年月日: 昭和36年8月17日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】独立当事者参加訴訟において、一当事者が証書の成立を認める自白をしても、参加人がこれを争う以上、当該自白の効力は参加人には及ばず、二段の推定(民訴法228条4項)も適用されない。 第1 事案の概要:不動産所有権移転登記手続請求事件の控訴審において、第三者Aが民訴法47条に基づき独立当事者参加した。本…
事件番号: 昭和31(オ)788 / 裁判年月日: 昭和33年8月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が認定した事実のうち、主要事実に付加されたに過ぎない事実の認定に違法があったとしても、そのことが主要事実の認定を左右しない限り、判決に影響を及ぼす違法とはならない。 第1 事案の概要:上告人が訴外Dのために本件宅地を借り受ける交渉を被上告人になしたという事実が原審で認定された。上告人はこの事…
事件番号: 昭和37(オ)393 / 裁判年月日: 昭和41年11月25日 / 結論: 棄却
売主所有の土地について指定された換地予定地の一部を目的物として売買契約が成立した場合において、その契約の成立にいたるまでの経緯および右目的物に関し原審が確定したような事情(原判決理由参照)があるときは、同契約に基づき買主の取得する当該土地所有権移転請求権については、いわゆる選択債権に関する民法の規定を類推適用すべきであ…