判旨
建物の譲渡と土地の貸借が同一書面に記載され、譲渡が贈与である等の明文がない場合でも、諸般の事情を総合して、建物譲渡が土地使用の対価でないならば、建物の贈与と土地の使用貸借の併存と認めることができる。
問題の所在(論点)
建物譲渡と土地貸借がセットで合意された際、明文の規定がない場合に、建物譲渡を土地使用の対価(賃料)とみなして賃貸借契約と解すべきか、それとも建物の贈与と土地の使用貸借の併存と解すべきか。
規範
建物譲渡と土地貸借が同一書面に記載され、かつ譲渡が贈与である旨や貸借が使用貸借である旨の明文がない場合であっても、直ちに賃貸借(有償契約)と解すべきではない。契約書面以外の諸般の事情を総合し、当事者の意思が「建物譲渡を土地使用の対価とする」点にあるか否かを基準に、賃貸借等か、あるいは建物の無償譲渡と土地の使用貸借の併存かを判断すべきである。
重要事実
上告人(会社)は、被上告人に対し、自己所有の建物を譲渡し、被上告人が上告人にその敷地を使用させる旨の契約を締結した。契約書には、建物所有権の移転と土地使用の承諾の記載はあったが、移転が贈与であることや土地使用が使用貸借であることを示す直接の文言はなかった。当時、当該土地周辺には駅前広場計画の噂があり、土地の貸借は計画実施までの臨時的なものとして合意されていた。
あてはめ
本件では、契約書の全条項に加え、契約成立に至る背景事情を総合検討する必要がある。土地の使用は、将来の駅前広場計画実施までという「臨時的暫定的なもの」であった。このような事情の下では、建物の所有権移転を土地使用の対価とする意思があったとは認めがたく、むしろ対価性のない建物の贈与と土地の使用貸借が併存しているとみるのが当事者の合理的な意思に合致する。
結論
本件契約は、建物の贈与と土地の使用貸借の併存であると認められ、賃貸借契約にはあたらない。
事件番号: 昭和32(オ)50 / 裁判年月日: 昭和33年6月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地借家法が適用されない「一時使用のための借地権」に該当するか否かは、賃貸借の目的、期間、設備、その他の諸客観的状況を総合的に考慮して判断される。本件では、原審の認定に基づき、本件宅地の賃貸借が一時使用のためのものであると認められた。 第1 事案の概要:上告人は本件宅地を賃借していたが、被上告人が…
実務上の射程
契約の性質決定において、書面の文言のみならず、契約締結の動機や目的等の外部的事実を総合考慮する手法を示す。特に、不動産の譲渡と利用がセットになる事案で、譲渡が利用の「対価」といえるか否かの認定手法として実務上参考になる。
事件番号: 昭和31(オ)327 / 裁判年月日: 昭和33年1月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法9条(現・借地借家法25条)の「一時使用」目的の借地権該当性は、当事者の主観的な意思のみならず、諸般の客観的な事実関係を総合的に斟酌して判断すべきである。 第1 事案の概要:本件宅地の賃貸借に関し、一時使用を目的とするものか否かが争われた。原審は、証拠に基づき認定した諸般の事情関係から、本件…
事件番号: 昭和27(オ)581 / 裁判年月日: 昭和32年1月31日 / 結論: 棄却
賃借権存在の確認請求訴訟において、原告の主張する賃料より低廉な賃料の定めある賃借権の存在を確認しても、当事者の申立てない事項につき判決したものとはいえない。