賃借権存在の確認請求訴訟において、原告の主張する賃料より低廉な賃料の定めある賃借権の存在を確認しても、当事者の申立てない事項につき判決したものとはいえない。
賃借権存在の確認請求訴訟において、原告の主張より低額の賃料の定めある賃借権の存在を確認することの可否
民訴法186条
判旨
賃借権存在確認の訴えにおいて、当事者が主張した賃料額と異なる額を判決主文に掲記しても、その額の確定を求める趣旨でない限り、処分権主義に反する違法とはならない。
問題の所在(論点)
賃借権存在確認の訴えにおいて、原告が主張した賃料額と異なる額を裁判所が認定し、主文に記載することは、処分権主義(申立事項と判決の一致)に抵触するか。
規範
処分権主義(民訴法246条)の下では、裁判所は当事者の申し立てない事項について判決をすることができない。しかし、確認の訴えにおいて、対象となる権利関係を特定するために付随的な要素(賃料額等)が記載された場合、その要素自体の確定が訴えの目的でないならば、認定された事実と主張との齟齬は直ちに判決の結論に影響を及ぼす違法とはならない。
重要事実
被上告人(原告)は、上告人(被告)に対し、本件土地の賃借権の存在確認および土地の引渡しを求めて提訴した。被上告人は、当該賃借権の内容を特定する意図で「1ヶ月の地代810円77銭」と主張したが、原審は賃借権の存在を認めつつ、地代については「76円20銭」であると認定し、これを主文に掲げた。上告人は、この認定が申立ての範囲を超えており、処分権主義に違反すると主張して上告した。
事件番号: 昭和31(オ)522 / 裁判年月日: 昭和32年9月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実認定は裁判所の裁量権の範囲に属する事項であり、原審がその裁量権の範囲内で行った事実認定を不当として法令違反を主張することは、適法な上告理由にはならない。 第1 事案の概要:上告人らは、原審(控訴審)が行った事実認定には誤りがあり、不当であると主張した。その上で、当該事実認定を前提とする原審の判…
あてはめ
被上告人の本訴請求は、賃借権そのものの存在確認と引渡しを求めるものであり、地代債務の額そのものの確定を求めるものではない。被上告人が主張した「1ヶ月810円77銭」という地代は、あくまで係争対象である賃借権を特定するための手段に過ぎない。したがって、裁判所がこれと異なる「76円20銭」という額を主文に掲記したとしても、それは権利関係の特定に付随する事実にすぎず、訴訟の目的である権利関係の存否(賃借権の有無)についての判断を誤ったものではない。よって、原判決の主文に影響を及ぼすような法令違背は存在しない。
結論
本件における地代額の認定の齟齬は、係争法律関係の存否に関する判断そのものではないため、処分権主義に違反せず、上告を棄却する。
実務上の射程
確認の訴えにおいて、権利の特定に必要な要素(賃料、期間、範囲等)について主張と認定が一部乖離した場合でも、それが確認対象の同一性を失わせない範囲であれば、処分権主義違反とはならないことを示唆している。ただし、賃料額自体の確認が独立の目的である場合には適用されない点に注意が必要である。
事件番号: 昭和40(オ)481 / 裁判年月日: 昭和41年6月17日 / 結論: 棄却
民訴法第三八七条は、判決の成立手続が違法な場合を規定しているのであつて、判決内容が弁論主義に違背している場合には適用されない。
事件番号: 昭和36(オ)912 / 裁判年月日: 昭和37年2月22日 / 結論: 棄却
昭和二〇年一〇月頃権利金として四、〇〇〇円を支払い当該八〇坪を賃借した旨の主張に対し、昭和二一年九月頃権利金として一、〇〇〇円を支払い当該八〇坪を賃借したとの認定をしても、当事者の主張の範囲を逸脱した認定とはいえない。
事件番号: 昭和36(オ)1161 / 裁判年月日: 昭和39年1月23日 / 結論: 破棄差戻
永年盛大に旗屋を営業していたものが、店舗兼住宅の戦災による焼跡を終戦後間もなく他人に「おでんや」営業用の建物の敷地として使用することを許し、その後右当事者間において右土地使用関係につき期間五箇年の使用貸借契約を内容とする契約書を取り交したなど判示の事情(当審判決参照)がある場合貸主が借主より毎月若干の金員を受領していた…