約束手形の振出人から手形と共に銀行の融資保証書の交付を受けた受取人は、右書面が銀行と振出人との間の契約を記載したものにすぎないと解される場合には、特設の事情の存しない限り、右書面を受け取る外、銀行に対し手形金の支払につき保証の約諾を得るためになんらかの手段を講ずる筋合のものであるのに、原判決が、かかる趣旨の証言を、単に右書面の記載自体からは、受取人と銀行との間に直接の法律関係を生じないとした外特に首肯するに足る説明を加えることなく排斥し、受取人と銀行との間の民事上の保証契約の成立が認められないものとしたのは、取引の実情、経験則に基かずにみだりに証拠を排斥した違法があるに帰する。
保証契約の成否の認定にあたり取引の実情、経験則に基かずにみだりに証拠を排斥した違法があるとされた事例。
判旨
銀行が特定の債務者に対して発行した融資保証書等が、債権者の要求に基づいて当該債権者に交付された場合、特段の事情がない限り、銀行と債権者との間に直接の保証関係を認めるのが取引の経験則に合致する。
問題の所在(論点)
銀行が債務者に対して発行した融資保証書等が、債権者の支払確保の要求に応じて交付された場合、銀行と債権者との間に直接の保証契約が成立したと認めるべきか。証拠評価における経験則違反の有無が問題となる。
規範
特定の債務者宛ての融資保証書等の書面であっても、債権者が自己に対する支払確保のために銀行の保証を要求し、これに基づいて債務者から当該書面が交付された場合には、取引の実状および経験則に照らし、特段の事情のない限り、銀行と債権者との間に直接の法律関係(保証契約等)の成立を認めるべきである。
重要事実
上告会社は、訴外Dに対する手形債権の支払を確保するため、被上告銀行の保証を要求した。Dは銀行からD宛ての「融資保証書」および「融資証明書」を取得し、これを本件手形に添付して上告会社に交付した。原審は、当該書面が銀行とDとの間の契約を示すにすぎず、上告会社との間に直接の法律関係を生じさせないとして、上告会社の請求を排斥した。
あてはめ
本件では、上告会社が銀行の保証を求めていたという背景がある。銀行発行の書面がD宛てであっても、それが手形に添付されて上告会社に交付された以上、上告会社がそれを自身への保証と誤解したか、あるいはD宛ての保証のみで満足したといった特段の事情がない限り、銀行との直接の関係を意図したとみるのが自然である。原審が、これらの経緯や取引実状を考慮せず、書面の文言のみから形式的に直接の法律関係を否定し、関係者の証言を排斥したことは、経験則に基づかない証拠評価の違法がある。
結論
銀行と債権者との間に直接の保証関係が成立し得ることを認め、経験則に反する証拠排斥を行った原判決を破棄し、差し戻した。
実務上の射程
契約当事者の確定や意思表示の解釈において、書面の形式的な宛先のみならず、その作成・交付に至る経緯や動機といった周辺事情(取引の経験則)を重視すべきことを示す。答案では、書面が存在するが当事者間に直接の契約書がない事案での「合意の成否」の立証において、経験則を用いた事実認定の論拠として活用できる。
事件番号: 昭和33(オ)239 / 裁判年月日: 昭和36年4月20日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】虚偽表示(民法94条1項)の成否は、真実の債務の存否、書換や一部弁済の有無、当事者の言動等の客観的事実を総合して判断すべきであり、これらと矛盾する認定は審理不尽・理由不備となる。証券業者が多額の債務を免除して「見せ手形」として受領することは、特段の事情がない限り経験則上認めがたい。 第1 事案の概…