判旨
手形保証人が振出人(被保証人)の人的抗弁を援用し得るかという論点に対し、保証人自身が直接の当事者として同様の抗弁(輸入許可という条件の不成就)を有する場合、保証人は自己の抗弁として支払を拒絶できる。
問題の所在(論点)
手形保証人が、振出人の有する人的抗弁(条件不成就)を援用して支払を拒絶できるか。手形行為独立の原則との関係が問題となる。
規範
手形行為独立の原則(手形法7条、32条2項参照)により、手形保証の債務は被保証債務の無効から影響を受けないのが原則である。しかし、振出人と受取人との間の原因関係における人的抗弁について、保証人自身がその合意の当事者となっている場合、または保証人自身に帰属する独自の抗弁がある場合には、保証人は自己の抗弁として支払を拒絶することができる。
重要事実
上告人(受取人)に対し、訴外会社(振出人)がバカスパルプの輸入許可申請に関連して本件約束手形を振り出し、被上告人がこれを保証した。その際、当該手形の支払については「輸入許可の取得」が事実上の条件(約定)となっていたが、実際には輸入許可が下りなかった。上告人が手形金の支払を求めたのに対し、手形保証人である被上告人が、条件不成就による人的抗弁を主張して拒絶した事案である。
あてはめ
本件において、原審は被上告人が単に振出人の抗弁を援用したのではなく、被上告人自身が上告人との間で、輸入許可という条件が成就しない限り支払義務を負わないという人的抗弁を直接有すると認定した。この事実認定に基づけば、被上告人は自己が当事者となっている抗弁を主張しているに過ぎず、手形行為独立の原則に反して他人の抗弁を援用しているわけではない。条件である輸入許可が成就しなかった以上、被上告人の支払義務は発生しないと解される。
結論
被上告人自身が直接の人的抗弁を有するため、手形金の支払義務を負わない。上告棄却。
実務上の射程
手形保証人が被保証人の人的抗弁を「援用」できるかという一般論については判断を避けているが、実務上は「保証人自身に帰属する抗弁」として構成できれば、独立の原則を回避して支払拒絶が可能であることを示している。答案上は、保証人と受取人の間の直接の合意の有無を事実認定し、自己の抗弁として主張すべきである。
事件番号: 昭和32(オ)898 / 裁判年月日: 昭和34年11月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】融通手形の振出人は、その手形が第三者の所持に帰した場合、当該第三者からの手形金請求に対し、融通手形であることを理由として支払を拒むことはできない。 第1 事案の概要:上告人は、いわゆる融通手形を振り出した。当該手形は第三者の所持に帰し、所持人から上告人に対して手形金の請求がなされたが、上告人は融通…